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脳血管内治療が有効な脳梗塞体積の分岐点を同定-国循ほか

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2020年12月24日 PM12:15

脳血管カテーテル手術、薬物療法のみと比較で脳梗塞体積が約120~130mLまでは症状改善の可能性

国立循環器病研究センターは12月23日、広範な脳梗塞を発症した患者に血管内治療(脳血管カテーテル手術)を施行した場合の脳梗塞体積が100mL未満の場合、薬物療法のみと比較して、自宅復帰可能なレベルまで改善が期待できる割合が明らかに多く、脳梗塞体積が約120~130mLまでは症状の改善が期待できると発表した。この研究は、同センターの吉本武史脳神経内科医師、井上学脳血管内科医長、猪原匡史脳神経内科部長、豊田一則副院長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Jurnal of the Neurointerventional Surgery誌」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

脳に栄養を送る太い血管が詰まった場合、脳は広範な虚血に陥り、重度の意識障害や運動まひを認める。虚血範囲は時間と共に拡大し、最終的に脳組織は壊死に陥り、高度の後遺症となる。このような急性期脳梗塞に対して、2015年に複数のランダム比較試験が行われ、脳血管内治療における自宅復帰可能なレベルまでの改善に対する有効性が証明され、海外および国内のガイドラインでも、脳血管内治療は「標準的治療」として位置付けられた。しかし、これらのランダム比較試験では、脳梗塞体積70mL未満の患者で検証されたため、70mLを超えた患者に対して、どこまで(脳梗塞体積が何mLまで)、脳血管内治療の有効性が示されるかは明らかになっていなかった。

研究グループは、同院脳血管部門に入院された症例データから、前向き研究であるNCVC Strokeレジストリを構築している。今回、薬物療法のみと比較して脳血管内治療の有効性を示すことができる脳梗塞の体積の上限値がどの程度なのかを検証するため、NCVC Strokeレジストリを用いて、研究を行った。

脳梗塞発症90日後の日常生活自立度を比較、解析

NCVC Strokeレジストリに登録された3,531人のうち、脳梗塞体積が70mlを超える157人分のデータが今回の研究で解析可能だった。そのうち、脳血管内治療を行った患者が49人(31%)。脳梗塞体積の解析/計測にはRAPIDソフトウエア(米国iSchemaView社)を使用。脳梗塞の体積ごとに3群(脳梗塞体積70~100mL,101~130mL,130mL<)に分け、各体積群で、脳血管内治療を行った患者と行わなかった患者の間で、脳梗塞発症90日後の日常生活自立度を比較、解析した。

解析の結果、脳梗塞体積70~100mL群では、脳血管内治療を行った患者で日常生活自立度が高い患者が多い結果となった。

脳梗塞体積101~130mL群では脳血管内治療を行った患者と行わなかった患者の間で、日常生活自立度が高い患者の割合に明らかな差はなかったが、やや脳血管内治療を行った患者が多い結果だった。

脳血管内治療が有効な脳梗塞体積の分岐点は120~130mLの間だった。一方で、脳血管内治療を行わなかった患者では、脳梗塞体積が増えると出血性脳梗塞の頻度も増えたとしている。

さらなる脳梗塞定量評価研究に期待

海外でも脳梗塞体積の70~100mlに対する脳血管内治療の有効性を報告した研究はあるが、上限値が120~130mLであることを報告した研究はいまだなく、脳血管内治療の適応診断に一石を投じる研究だとしている。

現在、海外では広範な脳梗塞に対する脳血管内治療の有効性を検証する、複数のランダム比較試験が行われている。どこまで広範な脳梗塞であれば症状の改善を期待できるのかは、世界的に注目されており、国内からもさらなる脳梗塞定量評価の研究が期待される、と研究グループは述べている。

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