大腸がん術後微小残存病変に対する世界初の治験
国立がん研究センターは12月22日、血中循環腫瘍DNA陽性の治癒切除後結腸・直腸がん患者を対象としたFTD/TPI療法とプラセボとを比較する無作為化二重盲検第3相試験(ALTAIR試験)を開始したと発表した。これは同センター東病院(以下、東病院)と一般社団法人CirKit-J(以下、CirKit-J)らが共同で行う。
近年、最先端のリキッドバイオプシー解析により、術後微小残存病変の検出が可能となり、より強度の高い薬物療法を術後早期に加えることで治癒率の向上が期待されている。しかし現在、血中循環腫瘍DNA陽性の治癒切除後の大腸がん患者に対して、再発を防ぐ有効な治療は確立されていない。同試験では、標準治療である経過観察(プラセボ)と比較し、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩(FTD/TPI、製品名:ロンサーフ)による先制治療を行うことの有用性を検証する。大腸がんの術後微小残存病変をターゲットとした治験の実施は世界で初めてだ。
対象は、外科治療が行われる大腸がん患者に対し、リキッドバイオプシーによるがん個別化医療の実現を目指すプロジェクト「CIRCULATE-Japan」に参加している大腸がん患者のうち、血中循環腫瘍DNA陽性が確認された患者。2020年6月から開始しており、国内外37施設(うち海外1施設)で、240例の患者を登録する予定だ。
製薬企業以外の民間企業からも出資を募る新たな治験の枠組み
患者を治癒(完治)に導く術後補助薬物療法(外科治療後の再発を予防する薬物療法)の臨床開発は、がん薬物療法の臨床開発として最優先されるべき課題の一つである。しかし、術後補助化学療法の臨床開発は、大規模かつ長期間の臨床試験での検証と、それに伴う多くの資金が必要となる。
この課題を解消するため、CirKit-Jは大腸がん治療薬の医師主導治験推進を目的とした株式会社アルファーAを設立した。今回の取り組みに賛同した医薬品開発業務受託機関(CRO)やソフトバンク株式会社、大鵬薬品工業株式会社の支援のもと同試験をサポートする。民間企業などの幅広い支援を活用するこの新たな枠組みの構築により長期間の大規模医師主導治験の実施および運営が可能となり、日本の医師が主導する臨床開発が加速することが期待される。
「今後も、同様の枠組みを活用して、世界初となる画期的な治療法を日本から継続的に発信していくことが期待される。さらに同試験から得られたがんゲノム情報および臨床情報のビッグデータを活用し、がんの遺伝子異常に基づいた個別化医療の実現と患者さん一人ひとりに応じた最適な医療の提供を目指す」と、研究グループは述べている。
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・国立がん研究センター プレスリリース