舌がんなどの口腔がん患者のQOL改善に向けて開発
東北大学は12月9日、「完全埋込型人工舌システム」の技術開発を進め、「食物を飲み込む機能を持つ人工舌」を発明し、2020年11月に特許を取得したと発表した。この研究は、同大加齢医学研究所の山家智之教授、白石泰之准教授、東北大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科の香取幸夫教授、かとう耳鼻咽喉科嚥下クリニックの加藤健吾院長らの研究グループによるもの。研究成果は、日本食道学会等で順次発表される予定だ。
画像はリリースより
舌がんを含む口腔がん患者数は、若年から高齢者に至るまで増加傾向にあり、治療後の口腔機能低下は患者のQOLを著しく制限する。例えば、外科手術でがんを根治切除後、切除された舌を再建する技術は向上しているが、再建された舌の部分(皮弁の部分)が動かないことから、食物の飲み込みや会話の機能に障害が生じるという問題点が残っている。
舌の再建を必要とする口腔がんの症例数は、日本で年間数百~千症例ほど存在すると予測されている。機能的に動く「人工の舌」があれば、患者の口腔機能の再建に役立ち、生命予後とQOLの改善に役立つものと期待されている。
将来的には、メンテナンスフリーの完全自動化も視野に
今回、開発されたシステムは、形状記憶合金などを応用したアクチュエータ、体外から非侵襲的にエネルギーを供給する1次コイル、体内に埋め込まれる2次コイル、およびコントロールシステムで構成された世界で初めての「完全体内埋込型システム」。
例えば、患者が食物を飲み込もうとする時に、1次コイルを下顎部に皮膚の外から接触させ舌の動きを制御することで、嚥下機能を再現することができる。また、嚥下機能の補助デバイスとして、植え込み型でない「サポーティングデバイス」としての応用も計画しているという。将来的には、自動制御システムを応用して、メンテナンスフリーの完全自動化も視野に入れて研究を進めているとしている。
開発した「完全埋込型人工舌システム」について研究グループは、「舌がんの手術後の飲み込み機能の再建に役立ち、患者のQOLの向上に貢献出来るものと期待される」と、述べている。
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・東北大学 プレスリリース