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肝がんの悪性度や治療選択のバイオマーカー候補ST6GAL1を同定-阪大ほか

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2020年12月09日 AM11:30

肝がんの薬剤選択に有用なバイオマーカーを探索

大阪大学は12月8日、肝がんでは患者ごとに異なるさまざまながん遺伝子の異常が発症に関与している(腫瘍間不均一性)ことから、これらがん遺伝子の違いががんの悪性度や薬物療法の治療効果に影響を与えていると仮説を立て、新たなマウスモデルを樹立することで、新規バイオマーカーST6GAL1の同定に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の明神悠太医員、小玉尚宏助教、竹原徹郎教授(消化器内科学)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Cancer Research」に掲載されている。


画像はリリースより

C型肝炎、B型肝炎、並びに近年増加傾向にある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などの慢性肝疾患の患者は病気の進行に伴い肝がんを併発することが知られており、その発症は生命予後に大きな影響を与える。肝がんは、現在日本においてがんによる死亡原因のうち第5位となっている極めて予後不良な疾患だ。特に悪性度の高い肝がんは早期発見が極めて重要だが、現在用いられている腫瘍マーカーの感度は十分ではなく、悪性度の高い肝がんを同定出来る有用なバイオマーカーはなかった。また、進行肝がんに対してはこれまでマルチチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるソラフェニブとレンバチニブが標準治療として使用されてきた。現在異なる作用機序を有する新たな治療薬も開発されているが、この2剤のTKIは肝がん治療において重要な役割を担っている。一方で、2剤の治療効果は同程度であり薬剤選択の指標となる有用なバイオマーカーはなかった。

がん遺伝子の腫瘍間不均一性を再現したモデルマウスを作製

がんは遺伝子の変異による病気であるという考え方に基づき、近年多数例の肝がんを対象としたがんゲノムシークエンス解析が世界的なプロジェクトとして行われてきた。その結果、肝がんにおいては病態進展に関わるがん遺伝子の異常が非常に多様で、患者ごとに異なることから、極めてがん遺伝子の腫瘍間不均一性が高いことが明らかとなった。一方で、この腫瘍間不均一性が薬物療法の治療効果に与える影響はよくわかっていなかった。

今回、研究グループは、がん遺伝子の違いによる腫瘍間不均一性が、がんの悪性度や薬物療法の治療効果に影響を与えていると仮説を立て研究を開始した。まず複数のがん遺伝子を一度に肝細胞に導入する手法を確立し、これによりがん遺伝子がランダムに活性化した腫瘍間不均一性の高い肝がんを発症する新規のマウスモデルを作製することに成功した。

モデルマウスにレンバチニブ治療でFGF19発現制御下のST6GAL1を同定

そこで、このモデルに対してレンバチニブ治療を行ったところ、FGF19遺伝子を発現した腫瘍の割合が無治療群と比べて有意に減少し、FGF19高発現肝がんがレンバチニブに対して高感受性であることを見出した。次に肝がん細胞株を用いたプロテオーム解析により、FGF19の発現制御を受ける分泌タンパク質ST6GAL1を同定した。

また肝がん外科切除例の検討から、血清ST6GAL1により予後不良なFGF19高発現肝がんを選別できることを見出した。さらに、血清ST6GAL1濃度に基づいて患者を層別化すると、ST6GAL1高値群ではレンバチニブ治療群の予後がソラフェニブ治療群より有意に延長していることを見出した。以上より、血清ST6GAL1濃度が高悪性度肝がんの同定や肝がん薬物療法における最適な薬剤選択のバイオマーカーとして有用である可能性が明らかとなった。

研究グループは、「バイオマーカーST6GAL1の臨床応用が進むことで、慢性肝疾患患者における高悪性度肝がんの発見や、進行肝がん患者における薬物療法のより最適・最良な薬剤選択が可能となり、生命予後の改善に寄与することが期待される」と、述べている。

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