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EP4-Gタンパク質複合体の構造解析に成功、世界初-関西医科大ほか

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2020年12月03日 PM12:15

潰瘍性大腸炎や急性心不全などの治療薬として期待される「EP4作動薬」

関西医科大学は11月30日、(以下、PGE2)が結合したプロスタグランジン受容体(以下、)と、Gタンパク質の複合体を精製・解析し、世界で初めてその構造と活性化メカニズムを解明したと発表した。これは、同大医化学講座の清水(小林)拓也教授と京都大学医学研究科・医学部分子生態統御学講座分子細胞情報学分野の岩田想教授、同分野の野島慎五大学院博士課程学生、同大ウイルス・再生医科学研究所ウイルス感染研究部門微細構造ウイルス学分野の野田岳志教授、同分野の藤田陽子大学院博士課程学生、国立研究開発法人理化学研究所放射光科学研究センター利用システム開発研究部門の山本雅貴部門長、同部門の重松秀樹研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Structure」に掲載されている。


画像はリリースより

プロスタグランジンは脂質メディエーターの1種であり、炎症はじめとしたさまざまな生理・病態生理に関わることが知られている。また、その受容体であるプロスタグランジン受容体は、プロスタグランジンを受容することで、細胞内部のGタンパク質を活性化させる、Gタンパク質共役受容体(GPCR)に属する受容体だ。また、プロスタグランジンにはPGD2、PGE2、PGF、PGI2があり、それぞれに対応した受容体DP(DP1、DP2)、EP(EP1、EP2、EP3、EP4)、FP、IPが存在している。一方、Gタンパク質にもGs、Gi、Gqなどの種類があり、受容体によって共役するGタンパク質の種類は、それぞれ異なっていることがわかっている。

さらに、PGE2受容体の一つであるEP4は、主にGタンパク質と共役することが知られているほか、その作動薬が潰瘍性大腸炎や急性心不全などの治療薬の候補となっており、EP4の活性状態の構造解析は、これらの疾患の治療法の開発につながる可能性があると考えられている。しかし、これまで開発されてきた治療薬候補化合物は、副作用などのため実用化には至っていないものが多くある。このことから、研究グループは活性型のEP4の構造を解明することで活性化メカニズムを明らかにし、活性をコントロールできれば、より副作用が少なく効果の高い治療薬開発が進展する可能性があると考え、今回の研究を開始した。

これまでに、清水(小林)教授らの先行研究では、PGE2が結合したEP3と、拮抗薬が結合したEP4の構造を解明していたが、Gタンパク質と結合した活性化状態のプロスタグランジン受容体の構造は未解明であり、プロスタグランジン受容体がどのようにGタンパク質と結合し活性化するのかは、まだ解明されていない状況だった。

EP4の活性化に重要なアミノ酸残基を同定、Gsタンパク質との結合方法も特有のものと予想

研究では、PGE2が結合したEP4とGタンパク質(Gs)の複合体を精製し、(Cryo-EM)で粒子像を撮影したのち、単粒子解析を行うことで分解能3.3Åの電子顕微鏡マップを取得し、3Dモデルを構築することに成功した。そして、得られた構造と拮抗薬の結合した不活性型のEP4の構造を比べると、これまで解明されてきた活性型のGPCRの構造の特徴と同様に、膜貫通ヘリックス6(TM6)が、細胞内側で開いていたという。

しかし、その開き具合は他のGs結合GPCRと比べて小さく、GsのC末端ヘリックスおよびループが、膜貫通ヘリックス2(TM2)側に寄ってEP4と結合しているという特徴を発見。さらに、結合部位を調べると、プロスタグランジン受容体でよく保存されているTM2のフェニルアラニン残基が、EP4によるGsの活性化に重要であることが明らかになった。

この結合様式は、これまで解明されたGPCRとGsタンパク質複合体の構造では認められなかった特徴で、プロスタグランジン受容体に特有なGsタンパク質との結合方法であると予想されるという。

さまざまな難治性疾患の副作用が軽減された治療薬開発につながる可能性

今回の研究成果により、Gsタンパク質と結合したプロスタグランジン受容体の構造が明らかになった。この構造と研究グループの先行研究で明らかになったEP4の不活性型構造を比較することで、活性化に伴う構造変化が明らかとなった。また、Gsタンパク質との結合に重要な残基がプロスタグランジン受容体内で保存されていることも判明している。今後、これらの情報がプロスタグランジン受容体に特有の活性化メカニズム解明の手がかりとなる可能性がある。

研究グループは、「さらに研究が進展すれば、潰瘍性大腸炎や急性心不全、、腎性尿崩症など、さまざまな難治性疾患に対して、副作用の軽減された治療薬開発が進むと考えられる」と、述べている。(QLifePro編集部)

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