胆管が免疫異常により障害を受ける難病
新潟大学は11月27日、原発性胆汁性胆管炎(Primary biliary cholangitis: PBC)の長期(1982~2016年まで)観察研究を行い、その結果を報告したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野の寺井崇二教授と高村昌昭准教授らが、関連施設とともに行ったもの。研究成果は、「Hepatology Research」にオンライン掲載されている。
PBCは、厚生労働省の難病指定にされており、肝臓の小さな胆管が免疫異常により障害を受ける疾患。早期では胆汁の流れが少し滞る軽度の胆管炎をきたす程度だが、進行し多くの小さな胆管が破壊され、胆汁の流れが一層悪くなると肝硬変さらには肝不全に至ることもある。
早くからPBCに注目し、軽症例で診断確定および予後改善が増えている
PBCは、早期より黄疸を呈し肝不全に至る症例もあり、早期に診断し適切な治療を受けることが重要だ。消化器内科学分野ではその前身の医学部第三内科の初代教授である故市田文弘名誉教授が、国内でPBCの疾患概念の認識が普及し始めた1968年に、黄疸が見られる進行したPBC症例を報告した。その後、歴代教授、教室、関連施設をあげて早期診断・治療を行ってきた。
最近では、症状もなく健診等で胆管障害の目安となるアルカリフォスファターゼ(ALP)が高値を示したことが発見の契機となることも多く、早期に診断し適切な治療を行うことで予後良好な症例が増えている。同疾患の病態や予後に関して、多数例の長期にわたる観察研究はほとんど行われておらず、今回の研究は、国内初の報告となるもので、教室の伝統を踏まえた、教室全体の成果だという。
35年分のPBC症例508例を解析、近年は男性および高齢女性が増加
研究では、消化器内科学分野および21の関連施設で集積され長期追跡調査を行ってきたPBC症例508例を用いた。診断された時期を1999年以前、2000~2009年、2010年以降と3つの年代別に分け、年齢、性別、血液検査所見、治療薬投与状況や反応性、生命予後等のさまざまな因子を解析した。
その結果、近年では男性例が有意に増加しており、女性例は高齢で診断される例が有意に増加していた。研究の対象症例は、無症状の時点で診断された例が1999年以前の診断例でも83.5%と多く、胆管障害の目安となるALP値や黄疸の目安となる総ビリルビン値も低い軽症例が多いことがわかった。また組織学的検査が行われた症例では、軽症例が90%を越えていることがわかった。研究グループは、「今後もPBC長期追跡調査を継続し、同疾患に対してさらなる病態解明を行い、難病に苦しんでいる患者の救命に貢献したいと考えている」と、述べている。
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