欧米を中心に数千人に実施、術後5年経過しても体重の再増加はないとの報告
東京慈恵会医科大学は11月17日、肥満症の新たな治療法として、日本国内で初となる「内視鏡的スリーブ状胃形成術」に成功したと発表した。この研究は、同大内視鏡医学講座 炭山和毅教授らと、同大外科学講座 肥満外科の研究グループによるものだ。
画像はリリースより
外科的な減量手術は治療効果が高い反面、侵襲度の高さや手術に伴う合併症などから、欧米を中心に高度肥満患者を対象に行われてきた。
内視鏡的スリーブ状胃形成術(Endoscopic Sleeve Gastroplasty;ESG)は2013年に、米国Mayo ClinicのChristopher Gostout教授らによって開発された。口から挿入した内視鏡を用いて、胃の一部を内側から縫い合わせて容積を減少させ(以下、縫縮)、満腹効果が得られるようにするもので、身体の表面に傷を作らず、患者の身体的負担を軽減しながら、外科的な胃の部分切除手術と同等の高い治療効果が得られる。肥満症の患者にとっては内科的治療と外科的減量手術の中間に位置する新たな治療選択肢となり、欧米を中心にすでに数千人に行われている。また、術後5年経過しても体重の再増加はないと報告されている。
日本国内で20人の肥満症の患者を対象に実施、術後6か月間の追跡調査
炭山教授は2005年、留学先の米国Mayo Clinicで、Gostout教授の指導のもと、内視鏡縫合器の開発に携わってきた。その後、同処置具は医療機器としてApollo Endosurgery社より「OverStitchTM」として製品化され、さまざまな内視鏡手術に応用されている。東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座においては、国内初の臨床導入となったOverStitchTMを用いた内視鏡治療後潰瘍の閉鎖を行う臨床試験を含め、さまざまな研究を行ってきた。このような背景から、ESGの安全性や臨床的意義を強く感じ、欧米に比べて肥満の程度は軽いものの、糖尿病や高血圧症などのメタボリックシンドロームの発症率の高い日本でこそESGを普及させるべきと考えた。
同大におけるESG研究は、治療に使用する内視鏡的縫合器(OverStitch SxTM)が、日本の医薬品医療機器等法(薬機法)の未承認医療機器であるため、臨床研究法に基づき倫理委員会による厳格な評価のもと、承認を得た特定臨床研究として実施されている。
今回の試験では、20人の肥満症の患者を募集し、術後6か月間の追跡調査を行う。日本国内においてもESGの安全性や減量効果が実証されれば、多くの肥満症の患者に、安全かつ効果的な治療を提供することができるようになると期待されている。
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・東京慈恵会医科大学 プレスリリース