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アルツハイマー病の発症に関わる神経細胞死のメカニズムを解明-東京都立大ほか

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2020年10月28日 AM11:45

疾患変異型MARK4がタウに及ぼす影響をショウジョウバエモデルで検討

東京都立大学は10月27日、アルツハイマー病でタウが溜まるメカニズムについて、疾患変異型MARK4がタウをリン酸化することで、タウをより固まりやすく、水に溶けにくくするため、タウが脳の中に溜まるのを促進し、神経細胞死を引き起こすことを新たに見出したと発表した。これは、同大大学院理学研究科生命科学専攻の大場俊弥大学院生、斎藤太郎助教、安藤香奈絵准教授らと、国立長寿医療研究センター認知症先進医療開発センターアルツハイマー病研究部の飯島浩一部長との共同研究によるもの。研究成果は、「Journal of Biological Chemistry」に掲載されている。


画像はリリースより

アルツハイマー病では、脳の機能を担っている神経細胞が次第に死んでいくため、記憶障害や生活機能障害が引き起こされる。これまでの研究から、アルツハイマー病の患者の脳内には、タウタンパク質が固まりとなって蓄積し、それによって神経細胞が死んでしまうことがわかっている。タウの蓄積を抑えられれば、神経細胞が死んでゆくのを止めることができる可能性があるが、脳内でどのようにしてタウが蓄積されるのかは明らかではない。

研究グループではこれまでMARK4という酵素に注目して、アルツハイマー病でタウが蓄積するメカニズムを探ってきた。その理由は次の3つである。1)アルツハイマー病の患者の脳内で疾患変異型MARK4の発現量が上昇していること、2)MARK4の活性がタウの病理学的な変化に該当するような変化と共局在していること、3)近年のゲノム解析により、疾患変異型MARK4がアルツハイマー病の発症リスクと相関すること。また、アルツハイマー病のモデルとして主にショウジョウバエを使用してきた。ショウジョウバエでは高度な遺伝子操作が可能で、さらにその一生は2か月とヒトに比べて短く、加齢に伴う疾患の研究を短期間で行うことができる。ショウジョウバエの脳はヒトの脳と類似した構造を持ち、ヒトの病気に関わる分子の多くはショウジョウバエにもある。これらの性質を利用して作られたアルツハイマー病モデルショウジョウバエは、記憶力の低下、神経細胞死、運動障害、個体死など、ヒトと似た症状を示す。

研究グループは以前、MARK4はタウをリン酸化することによって、タウを神経細胞に溜まりやすくすることを報告してきた。そして今回、新しいショウジョウバエモデルを用いて、疾患変異型MARK4がタウに及ぼす影響を調べた。

疾患変異型MARK4は、タウを固めたり、水に溶けにくくしたりするという新しい機能を獲得

その結果、MARK4は本来の機能であるリン酸化に加えて、新たなメカニズムでタウの蓄積を促進することがわかった。タウは通常は一分子で存在しているが、たくさんのタウ分子が集まって塊になる(凝集する)と、通常と異なる振る舞いをする。疾患変異型MARK4はこのタウの凝集を促進することがわかった。さらに、タウは通常では水に溶けやすい分子だが、疾患変異型MARK4により、水に溶けにくい形態を取ることで蓄積しやすくなることも見出した。

以上のことから、疾患変異型MARK4は、タウを固めたり、水に溶けにくくしたりするという新しい機能を獲得してしまったために、神経細胞にタウが溜まりやすく、より細胞が死にやすくなっていることが明らかになった。今回の研究は、疾患変異型MARK4に関するもので、変異のないMARK4も、疾患によって今回のような異常な性質を獲得してしまう可能性がある。「アルツハイマー病の患者数は年々増えていく中で、その根本的な治療法は未だ確立されていない。今後、MARK4を標的としたアルツハイマー病の治療戦略の開発への応用が期待される」と、研究グループは述べている。

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