網膜神経節細胞死を誘導するカルパインに着目
東北大学は10月23日、緑内障に対する新規治療薬の開発へ向けて、網膜の細胞死に関与するタンパク質であるカルパインの生体内イメージングシステムを開発したと発表した。これは、同大大学院医学系研究科眼科学分野の中澤徹教授、浅野俊文助教、津田聡助教らのグループが、東京大学大学院医学系研究科生体情報学分野の浦野泰照教授らの研究グループと共同で行ったもの。研究成果は、「Bioconjugate Chemistry」に掲載されている。
画像はリリースより
40歳以上の緑内障有病率は5.0%とされ、失明原因第1位の疾患となっている。緑内障の治療として、手術や投薬による眼圧下降が有効だが、眼圧下降のみでは治療効果が十分に得られず、病状が進行する場合も少なくない。
研究グループは、緑内障治療に対する新たなターゲットとして、網膜神経節細胞死を誘導するカルパインというタンパク質に着目してきた。しかし、さまざまな要因が影響している緑内障において、カルパインがどのように関与するのか十分に明らかになっていない。そこで今回、生体における網膜神経節細胞のカルパイン活性の評価手法として、新たな生体内イメージングシステムを開発した。
カルパイン阻害薬の適応や治療効果を判定するためのコンパニオン診断薬として有用
研究グループはまず、カルパイン活性検出蛍光プローブとしてAcetyl-L-leucyl-L-methioninehydroxymethyl rhodamine green (Ac-LM-HMRG)を開発。このAc-LM-HMRGを薬剤(NMDA)誘導緑内障ラットモデルの眼球に注射し、臨床で使用されている共焦点走査型ダイオードレーザー検眼鏡で眼内を撮影した。
次に、網膜神経節細胞において、薬剤誘導網膜障害によって誘導されたカルパイン活性を蛍光として観察し、その細胞数を定量的に計測できることを確認した。さらに、このカルパインが活性化して蛍光上昇した網膜細胞の数が、カルパイン阻害薬を使用することで、大幅に減少することも計測できたという。
今回の研究成果により、Ac-LM-HMRGを用いた生体内イメージングの、カルパイン阻害薬の適応や治療効果を判定するためのコンパニオン診断薬としての有用性が示唆された。「本研究によって生体内カルパイン活性の評価が可能となったことで、神経保護治療の開発に役立つことが期待される」と、研究グループは述べている。
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