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日本人がん患者由来PDXライブラリーを構築、がん医療推進に向けた基盤整備を達成-LSIメディエンスほか

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2020年10月22日 PM12:00

ヒトがん組織の免疫不全動物への移植片「PDX」、日本人のライブラリーが必要

(AMED)は10月20日、がん医療推進のための日本人がん患者由来PDXライブラリー整備を達成したと発表した。これは、株式会社LSIメディエンス、、医薬基盤・健康・栄養研究所が、AMEDと2018年3月に委託環境整備契約を締結した医療研究開発革新基盤創成事業の環境整備課題「がん医療推進のための日本人がん患者由来PDXライブラリー整備事業」として行ったもの。環境整備実施計画を上回る規模のPDXライブラリー構築により、がん医療・医薬品開発に活用するための基盤整備が達成された。


画像はリリースより

抗がん剤の開発は極めて難しく、臨床試験の開始から上市に至る成功率はわずか5%程度であると報告されている。その一因として、現在主流であるがん細胞株を使用した非臨床試験の臨床予測性が低いことが指摘されている。一方、PDX(Patient-Derived Xenograft)は、ヒトのがん組織を免疫不全マウスに移植した組織片で、非臨床試験の臨床予測性を高める画期的な創薬ツールとして注目され、欧米ではPDXライブラリーの産業利用が進んでいる。しかしながら、日本では産業利用可能なPDXライブラリーが整備されておらず、国内製薬企業は欧米のPDXライブラリーに頼らざるを得ない状況にある。日本の創薬の成功確率を向上させ、画期的な新薬をスピーディーに創出するためには、国内で高い信頼性のもとに樹立され、厳しく品質管理されたPDX株が利用できる環境整備が求められている。今回、研究グループは、(PMDA)、、患者団体の意見を踏まえて、日本人がん患者由来のPDXライブラリー(J-PDXライブラリー)を構築し、医薬品開発およびがん医療を推進するための基盤を整備した。

国がんはJ-PDXライブラリー構築、希少がん含む20種以上登録

国立がん研究センターは、生命倫理・医事法の専門家が参画して患者同意取得からPDX作製に至る体制・規則を環境整備期間内で整備し、研究計画のIRB(Institutional Review Board)承認を得て産業利用が可能なJ-PDXライブラリーの作製を2018年8月から開始した。同環境整備の終了時点(2020年5月末)で1,100人を超える患者同意を取得し、目標とした150株を大きく上回る300株を超える新規PDXの生着が達成された。登録されたがん種は、大腸がん、肺がん、乳がんなどメジャーながんの他、肉腫など希少ながんも含め20種以上におよぶ。

J-PDXの特徴は、「臓器横断的にPDXを樹立し、特に、(骨肉腫・横紋筋肉腫など)、アジアに多いがんに注力」「手術だけでなく薬剤耐性期の検体からもPDXを樹立」「治療歴を含む詳細な臨床情報を付帯したPDX」であることが挙げられます。今回整備されたJ-PDXライブラリーを利用することで、肺がん、大腸がん、乳がんなどのメジャーながんに加えて、治療選択肢が少ない希少がん、難治がん、小児がんにおける医薬品開発が促進されることが期待される。

NIBIOHNは、Super-SCIDマウス利用でPDX作製率向上に成功

(NIBIOHN)は、PDXの作製が困難ながん種に着目した基礎研究を実施し、独自開発した重度免疫不全マウス(Super-SCID)が市販の重度免疫不全マウスよりも乳がん、甲状腺がん等のPDX作製率向上に有用との結果を得た。医薬基盤・健康・栄養研究所が今回の基礎研究で作製したPDX約20株はLSIメディエンス熊本研究所のPDXライブラリーに保存された。また、現有のPDXライブラリー250株を公開し、PDXの創薬利用に係る運営規定も整備された。

LSIメディエンスは、薬事承認基準に準拠した事業整備を達成

LSIメディエンスは、同環境整備の出口戦略として薬事承認基準に準拠したJ-PDXライブラリー事業(創薬支援事業)の整備を達成した。具体的には、LSIメディエンス熊本研究所GLP施設において国立がん研究センター研究所からJ-PDX生着株を受け入れてライブラリーを整備し、PDXの解析および医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律(薬機法)に準拠した高品質の薬理試験を製薬企業に提供するための専用施設・設備機器・専門要員を計画通り整備した。PDX事業に使用できるPDX株を拡充するための施策として、医薬基盤・健康・栄養研究所および実験動物中央研究所(CIEA)が保有するPDXライブラリー(CIEA-PDX)の取り扱いを可能とし、約350株のJ-PDXライブラリーと合わせて約1,000株の日本人PDXライブラリーの創薬利用を達成した。

同環境整備の成果として、PDXの産業利用の難関であった倫理的・法的・社会的課題(ELSI:Ethical、Legal、Social Implications)が解決され、国内最大のがん研究所と2つの臨床研究中核病院(中央病院・東病院)を擁する国立がん研究センターとの密接な連携の下で、抗がん剤治療抵抗性、希少がん等の特長を有するJ-PDXライブラリーが整備され、LSIメディエンス熊本研究所においてPDXを使用した創薬支援の基盤が整備された意義は大きく、日本発の医薬品開発およびがんゲノム医療(精密医療)への貢献が期待される。

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