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新型コロナウイルスの重症化を予測する5因子を同定-NCGM

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2020年09月25日 PM12:30

医療資源を適切に分配するためには、軽症化と重症・重篤化の事前予測が必須

)は9月24日、COVID-19患者の血液を経時的に収集し、病態の経過に沿った形で血中の液性因子の網羅的解析を行った結果、重症化を予測する液性因子を同定したと発表した。この研究は、NCGMゲノム医科学プロジェクトの杉山真也副プロジェクト長、センター病院国際感染症センターの木下典子医師、国際感染症センターの大曲貴夫センター長、研究所ゲノム医科学プロジェクトの溝上雅史プロジェクト長の研究グループによるもの。研究成果は、「Gene」オンライン版に掲載準備中(in press)だ。


画像はリリースより

2019年末よりSARS-CoV-2の感染が世界的に拡大し、2020年8月末現在、国内の感染は一旦落ち着きつつある一方で、世界的には継続的に新規感染者が毎日20万人を超え、死亡者が5,000人前後発生している。これまでのところ、COVID-19患者の約8割が軽症のまま回復し、残りの約2割が重症もしくは重篤化することがわかっている。特に、重症・重篤化する患者では、感染初期は、軽症と見られる症状で、そこから急激な悪化が見られ、酸素吸入や人工呼吸器(もしくはECMO)が必要な状態へ移行するという特徴な臨床経過がある。現在のところ、この重症・重篤化する患者を予測する有効な手段がなく、患者全員を隔離もしくは入院させるなどして、症状の経過を観察する必要がある。そのため、患者が爆発的に増加するステージおいては医療資源が圧迫される原因となり、医療崩壊が危惧される状態になり得る。

COVID-19患者の重症・重篤化を事前に予測できる診断マーカーがあれば、比較的割合の少ない重症・重篤予備群に注力した経過観察が可能となり、限られた医療資源の有効活用が可能となると言える。また、診断の迅速性を考えると、血液等を使った臨床検査で短時間での結果判定が望ましいと思われる。そこで研究グループは、COVID-19患者から得られた経時的な採血検体()を用いて、予後予測が可能となる分子マーカーの探索を進めた。軽症化と重症・重篤化の事前の予測が可能となれば、医療資源の適切な分配が可能となり、集中的な治療を必要とする患者に最大限に注力することができ、救命することにつながると考えられる。

軽症回復者と重症化患者を分けることが可能な因子として、CCL17、IFN-λ3、CXCL9、IP-10、IL-6を同定

まず、COVID-19患者28人の血清を使い、液性因子の網羅的解析を実施。各患者で3ポイント以上の採血がある人を選び、病態の経過に沿った液性因子の変化を追跡した。その結果、軽症回復者と重症化患者を分けることが可能な因子として、CCL17、IFN-λ3、CXCL9、IP-10、IL-6を同定。これらの因子は、その病態の経過に合わせた特徴から2つに分けられることが判明した。

CCL17は、COVID-19感染初期から軽症者と将来の重症者の間で、血液中の濃度に差が認められた。具体的には、将来の重症者では感染初期の軽症時から基準値よりも低い値を示し、そのまま重症化まで低い値が続いた。一方で、軽症者は健常人とほぼ同じ値を取ることがわかった。残りの4因子は、感染初期では軽症者と将来の重症者に違いはないものの、重症化した患者では、その重症化が認められる数日前に急激に血液中の値が上昇することが明らかになった。

続いて、これらの5因子がCOVID-19重症化に特異的なものなのか、他の疾患群から得られた血液で確認した。使用した疾患群は、C型慢性肝炎、児童精神疾患、2型糖尿病、慢性腎不全、慢性心不全、間質性肺炎、関節リウマチ。その結果、CCL17が低い値を取るのは、COVID-19重症化のみだった。IFN-λ3は、C型慢性肝炎で一部高い値を示したが、COVID-19重症化患者で統計的に有意に高い値を示した。CXCL9とIP-10は、COVID-19重症者で特徴的に高い値を示した。IL-6は関節リウマチで高い値を示すことがあったが、COVID-19重症者で統計的に有意に高い値を示した。これらのことから、上記5因子はCOVID-19重症化患者を早期に発見し、囲い込むことに有用である可能性が示された。

国内の多施設共同前向き試験で5因子の実臨床での有効性について検証を行う予定

今回の結果は、5因子を適切なタイミングで測定することで、COVID-19重症化患者を早期に発見し、治療することが可能となり得ることを示すもの。今後、実臨床での有用性が示されれば、軽症患者と重症患者を適切に入院やホテル待機の可否を判断でき、医療資源の適切な配分ができるようになると考えられる。

「今後は、国内で多施設共同での前向き試験の準備を進めている。賛同を得られた共同研究施設と協力して、今回の5因子の実臨床での真の有効性について検証を行う」と、研究グループは述べている。

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