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COVID-19死亡危険因子として、新たに「高尿酸血症/痛風」-慶大ほか

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2020年09月23日 PM01:00

首都圏345症例の基礎情報などを検討、重症化や死亡に至る危険因子を解析

慶應義塾大学は9月18日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)首都圏345症例の基礎情報、入院時の症状、併存疾患などを検討し、酸素吸入を要する重症化の危険因子や、死亡に至る危険因子の解析を行った結果を発表した。この研究は、同大医学部内科学教室(呼吸器)(福永興壱教授、石井誠准教授)と慶應義塾大学関連病院で構成する研究グループ(K-CORC)によるもの。研究成果は、国際科学「Journal of Infection」のオンライン版に掲載されている。

COVID-19は、コロナウイルス科に属する新興ウイルスによる感染症で、2019年12月に中国武漢で原因不明の肺炎が報告されて以降、日本を含むアジア、欧州、北南米、アフリカと、全世界に感染が拡大している。2020年9月16日時点で、世界での罹患者は2900万人超、死者は93万人を超えている(死亡率3.17%)。

日本では、2020年1月中旬にCOVID-19の1例目が報告され、指定感染症と定められた。2月にはクルーズ船(ダイヤモンドプリンセス号)におけるアウトブレークが発生。さらに市中感染も広がり、4月7日には東京都を含む7都府県で緊急事態宣言がなされ、その後、徐々に新規発生者数は減少し、5月25日に全国で緊急事態宣言が解除された。その後、再度新規患者数が増加し第二波を迎え、そのピークも越えたと評価されているが、WHOをはじめとする感染症・公衆衛生学の専門的見解によれば、このパンデミックは当面の間は続くとされ、今後も流行を繰り返すことは必至の状況といえる。

これまで、COVID-19に関して全世界から膨大な量の論文が報告されているが、日本からのまとまった症例数の論文報告はクルーズ船(ダイヤモンドプリンセス号)のアウトブレークに関連した報告が中心だった。8月上旬に国内メディア勉強会資料として報道発表された国立国際医療研究センターが主導するレジストリの2,600例超の中間解析の報告によると、酸素を必要とした重症化患者は29.7%で、死亡率は7.5%だった。重症化しやすい症例として、男性、、喫煙者、併存疾患(心血管系、糖尿病、(COPD))が挙げられたが、統計的有意差検定は行われていない中間報告であり、これらの要因が真のCOVID-19の重症化因子であるかは、今後の解析結果が待たれるところだった。


画像はリリースより

重症化の危険因子として、COPDの併存症、入院時の症状としての意識障害などが関与

今回、研究グループは、K-CORC内の14病院に2020年6月中旬までに入院した全患者345例の基礎情報、入院時の症状、併存疾患などを検討。また、酸素吸入を要する重症化の危険因子や、死亡に至る危険因子の解析を実施した。

解析の結果、345例の年齢中央値は54歳で、男性が198例(57.4%)を占めた。併存疾患は、高血圧症が90例(26.1%)と最も多く、次に糖尿病(48例[13.9%])、(28例[8.1%])と続いた。

症状では、発熱(252例[73.0%])が最も多く、咳嗽(166例[48.3%])、全身倦怠感(133例[39.5%])と続いた。

酸素吸入が必要となる重症化の危険因子として、上位より、COPDの併存症、入院時の症状としての意識障害、息切れ、全身倦怠感、高血圧症の併存症、高齢が関与していた。さらに、死亡に至る危険因子として、すでに報告されている高齢、慢性腎臓病に加え、高尿酸血症が関与していることを初めて示した。

高尿酸血症/痛風によりサイトカインストームの過剰な炎症がさらに増幅、死亡リスク上昇の可能性

今回の研究は、これまで日本でまとまった症例数の報告が無かったCOVID-19に関して、首都圏の市中感染300例以上を対象に行った初めての解析である。また、今回明らかになった高尿酸血症/痛風が多変量解析においても独立した死亡リスク因子であるという点は、これまで諸外国で報告がない。

日本では、国立感染研究所疫学センターによる、国内流行ごく早期の3月までの患者を対象とした解析で、高尿酸血症/痛風が危険因子である可能性が指摘されていた。この解析の症例は約半数がクルーズ船あるいは海外での感染事例だったが、今回の解析では、日本の市中感染での重症化リスクが初めて明らかにされた。一般に、人が病原体に感染した場合には、病原体と戦って体を守るため、私たちの免疫システムがはたらき、細胞からサイトカインが産生されて、炎症が生じるが、COVID-19の重症例ではそのサイトカインが過剰に産生され、免疫の暴走である「」と呼ばれる状態に陥る。サイトカインストームにより肺をはじめ複数の臓器で過剰な炎症を引き起こすと、しばしば患者が死に至る。

高尿酸血症は、炎症や酸化ストレス反応を増強させて、炎症や酸化ストレスが関与する疾患(糖尿病や関節リウマチ等)の死亡リスクを上昇させることが知られている。今回の研究で示された、高尿酸血症/痛風が、COVID-19重症化の危険因子となるメカニズムに関しても、高尿酸血症/痛風の存在により、COVID-19の重症化の鍵とされるサイトカインストームを通じた過剰な炎症がさらに増幅されて、死亡リスクが上昇した可能性が考えられる。

今後、第二波の以降の症例も合わせて集積を継続し、臨床基礎情報に加え、採血データ、CT画像情報、治療内容の検討も行っていく、と研究グループは述べている。

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