単容量型ドライパウダー吸入器、見る・聞く・感じることで正しく吸入できたかを確認
ノバルティス ファーマ株式会社は8月26日、日本で初めてとなる1日1回投与のLABA/LAMA/ICS固定用量配合ぜんそく治療剤「エナジア(R)吸入用カプセル中用量、高用量」(一般名:インダカテロール酢酸塩/グリコピロニウム臭化物/モメタゾンフランカルボン酸エステル、以下、エナジア)を発売した。同剤の発売に伴い、同社は9月10日にメディアセミナーを開催し、一般社団法人日本喘息学会理事長、近畿大学病院病院長の東田有智氏による講演、帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー学教授の長瀬洋之氏とぜんそく患者で声優の森川智之氏によるパネルディスカッションなどが行われた。
画像はリリースより
エナジアは、長時間作用性β2刺激剤(LABA)のインダカテロール酢酸塩、長時間作用性抗コリン剤(LAMA)のグリコピロニウム臭化物、吸入ステロイド剤(ICS)のモメタゾンフランカルボン酸エステルのLABA/LAMA/ICS固定用量配合ぜんそく治療剤。同剤は、ハイドロフルオロアルカン/クロロフルオロカーボン(HFA/CFC)等のオゾン層破壊物質を使わない、単容量型ドライパウダー吸入器「ブリーズヘラー(R)」で吸入する。
ブリーズヘラーは、吸入抵抗が少ないため、吸入制限のある患者に適したデバイスであり、さらに同吸入器は、患者自身が「見る」「聞く」「感じる」ことで薬剤を正しく吸入できたかどうかを確認できる設計となっている。具体的には、透明のカプセルに薬剤が充填されており、カプセル内に充填されていた薬剤が吸入後になくなっていることを確認できる(見る)、吸入時にカプセルの回転音が聞こえる(聞く)、添加物として乳糖が含まれているため、吸入直後に口の中でかすかに甘味を感じることができる(感じる)、という3つの仕組みで全量を吸入できたことを確認可能だ。東田氏は、ブリーズヘラーにより「確実な吸入で、確かな効果を患者さんに届けることが期待できる」とコメントした。
また、プロペラ・ヘルス社により開発された、ブリーズヘラーに装着するセンサー「ブリーズヘラー(R)センサー※」とBluetoothでつなげることが可能な「プロペラ(R)スマートフォンアプリ」により、吸入確認、服薬リマインダー機能を利用できるほか、患者が選択すれば主治医に日々の服薬の記録を共有することも可能だ。
※医療機関には、ノバルティス ファーマ株式会社から「ブリーズヘラー(R)センサー」および「プロペラ(R)スマートフォンアプリ」の情報とともに、「ブリーズヘラー(R)センサー」本体を提供する。医師が治療上必要と判断した場合、エナジアまたはアテキュラ(一般名:インダカテロール酢酸塩/モメタゾンフランカルボン酸エステル)で治療中の患者に、「ブリーズヘラー(R)センサー」を提供している。
投与26週時のトラフFEV1(呼吸機能)を有意に改善
エナジアの国際共同第3相試験IRIDIUM試験は、ぜんそく患者3,092例を対象とした無作為化二重盲検比較試験で、エナジア中用量のLABA/ICS固定用量配合ぜんそく治療剤アテキュラ中用量に対する優越性、エナジア高用量のアテキュラ高用量に対する優越性の検証を目的として実施された。
同試験の結果、主要評価項目である投与26週時のトラフFEV1(呼吸機能)について、エナジア中用量はアテキュラ中用量より有意に改善し、エナジア高用量はアテキュラ高用量より有意に改善した(高用量(0.065 L、p<0.001)、中用量(0.076 L、p<0.001))。
なお同試験における有害事象および重篤な有害事象の全体的な発現率は概して低く、投与群間で同程度だった。最も多く報告された有害事象および重篤な有害事象は、ぜんそく増悪だったとしている。
ICS/LABA治療からの治療ステップアップに期待
一般社団法人日本喘息学会理事長
近畿大学病院病院長 東田有智氏
東田氏は、現在のぜんそく治療における課題について、多くの治療薬が承認されているにもかかわらず「ぜんそくコントロールが不十分の患者が未だ多い」ことなどを挙げた。「1日複数回の吸入や異なる吸入器の使用等、投与の煩雑さが服薬アドヒアランスの低下につながり、コントロール不十分の要因の1つと考えられる」と、コメント。今回、エナジアが治療選択に加わることについては「1日1回吸入は、間違いなくメリット。服薬アドヒアランスをカバーできるのではないか?」と、評価した。
最後に東田氏は、「ICS/LABAによる治療を行っていてもぜんそく症状(息切れ、咳等)がある患者に対して、(エナジアは)確実な治療ステップアップをもたらす」と、同剤への期待を述べて、講演を締めくくった。
患者の半数以上で医師に「十分に伝えられていないものがある」、最多は「今後の治療に関する不安」
続いて、ノバルティス社実施の「成人ぜんそく患者の意識調査」の結果が紹介された。同調査は、ぜんそくと診断されてから10年以上が経過しており、かつICS/LABA配合剤を使用している全国の20~70代のぜんそく患者を対象に実施した、インターネットアンケート調査だ(調査期間:2020年7月13日~7月16日、サンプル数:330サンプル)。
調査の結果、9割の患者が⾃⾝のぜんそくを「コントロールできている」もしくは「まあコントロールできている」と回答した一方で、72%の患者が最近1か⽉に何らかの症状があったと回答していたことが明らかになった。症状として最も多く回答されたのは「咳」(47%)であり、その他には「痰」、「喘鳴」、「息切れ」の回答がそれぞれ3割程度だった。
(左)から、
帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー学教授長瀬洋之氏、
声優・森川智之氏
ぜんそく患者の森川氏は、同調査で明らかになった患者におけるコントロールの認識と実際の症状とのズレについて、「働きながらなどで、うまくコントロールできていなかったと思う」と自身の経験を振り返る。長瀬氏も、患者さんのコントロールできているという認識と、実際の症状に「ギャップを感じる」とコメントした。
また、同調査では患者の半数以上おいて、何かしら医師に⼗分に伝えられていないと思うものがあったことも明らかになっている。⼗分に伝えられていないと思うもので最多となったのは「今後の治療に関する不安」(25%)だった。⼗分に伝えられていない理由としては、「どのように伝えればいいのか分からない」が最も多く、39%だった。
長瀬氏は、エナジアの発売などを受けて「(以前よりも)もっと高い治療レベルを目指せるようになった。ぜんそく患者さんは、気になる症状をありのまま医師に伝えてもらい、一緒に高い治療レベルを目指していければ」と、述べた。
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・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース