指定難病のIgG4関連疾患、明確な治療標的やバイオマーカーは発見されておらず
近畿大学は9月16日、原因不明の難病の一つであるIgG4関連疾患・自己免疫性膵炎の新たなバイオマーカーとして「I型インターフェロン」と「インターロイキン33」を発見したと発表した。この研究は、同大近医学部内科学教室(消化器内科部門)の渡邉智裕准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
IgG4関連疾患は、抗体の一つであるIgG4が血液中や障害された臓器に増加することを特色とする新規疾患概念。消化器領域では従来、自己免疫性膵炎と診断されていた症例の大半が、IgG4関連疾患が膵臓に生じたものであることが判明している。
近年、IgG4関連疾患に対する医師の認識が高まるにつれ、その患者数も増加しているが、どのようなメカニズムで病気が起こるのかは明らかになっていない。現在、IgG4関連疾患は指定難病となっており、明確な治療標的やバイオマーカーの発見には至っておらず、研究グループは2008年から、IgG4関連疾患・自己免疫性膵炎の病態の解明や治療標的を探索する研究を続けてきた。その結果、形質細胞様樹状細胞の産生する「I型インターフェロン」と「インターロイキン33」が病的な役割を果たすことを見出している。
画像はリリースより
診断・疾患活動性の指標として、血清「I型IFN」「IL-33」が有用
今回の研究では、IgG4関連疾患・自己免疫性膵炎患者の血清を用いて「I型インターフェロン」および「インターロイキン33」がIgG4関連疾患・自己免疫性膵炎の診断および疾患活動性の新たなバイオマーカーになり得るかを検討した。
近畿大学病院において、2018年1月~2019年12月の期間に受診した、新規IgG4関連疾患・自己免疫性膵炎患者21人の血清を用い、アルコール性慢性膵炎患者および健常者を対照に解析を実施。その結果、IgG4関連疾患・自己免疫性膵炎患者の血清では、IgG4のみならず、「I型インターフェロン」「インターロイキン33」濃度が有意に上昇していることがわかった。「I型インターフェロン」および「インターロイキン-33」は、IgG4と同等にIgG4関連疾患・自己免疫性膵炎を正しく診断できたという。
また、IgG4関連疾患・自己免疫性膵炎のステロイド治療導入前と、導入後寛解状態における各免疫グロブリン、サイトカインの血清値の比較を行ったところ、血清IgG4のみならず、「I型インターフェロン」および「インターロイキン33」が有意に低下していた。これらの結果から、血清「I型インターフェロン」「インターロイキン33」が診断および疾患活動性のバイオマーカーとして、血清IgG4と同等に有用であることが明らかになった。
同研究により、IgG4関連疾患・自己免疫性疾患の診断、疾患活動性の指標として、血清「I型インターフェロン」「インターロイキン33」が有用であることが明らかになった。「I型インターフェロン」「インターロイキン33」の制御を用いた、IgG4関連疾患・自己免疫性膵炎の新規治療法の開発が期待される、と研究グループは述べている。
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