小学高学年児のネット依存と発達障害特性に関連は?
弘前大学は9月7日、子どものインターネット依存状態の推移と、その推移のパターンと状態の変化における神経発達障害特性の関与について明らかにしたと発表した。これは、同大医学部心理支援科学科の髙橋芳雄准教授、足立匡基准教授(両名とも医学研究科附属子どものこころの発達研究センター兼任)らと、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の廣田智也先生(弘前大学医学研究科神経精神医学講座客員研究員)との共同研究によるもの。研究成果は、「Journal of Autism and Developmental Disorders」に掲載されている。
画像はリリースより
近年、ICT機器の普及に伴い、子どものインターネット依存に対する注目が集まっている。しかし、インターネット依存の状態が長期的にどのように変化するのかはあまり知られていない。同大医学研究科附属子どものこころの発達研究センターと青森県弘前市教育委員会では毎年、「子どものこころの健康に関する調査事業」を協働で実施。その一環として、この研究が行われている。研究では、弘前市の小学4年生から中学1年生の児童生徒5,483人を対象にインターネット依存の状態が2年間でどのように変化するか調査。加えて、神経発達障害と関連した特性がインターネット依存の状態の長期的な変化に対してどのように影響するかについても検討した。
ネット依存の維持と新規発生は、不注意特性と関連
調査開始時点でインターネット依存の状態の子どもの中で、その後2年間インターネット依存の状態が維持される確率は47%にも上ることが判明した。加えて、高学年がインターネット依存の状態が比較的維持されやすいことも確認された。また、調査開始時点でインターネット依存でなかった子どもが、調査期間内にインターネット依存の状態になる確率は11%程度であった。
インターネット依存状態の推移と発達障害特性の関連を調べた結果、自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症(ADHD)と関連した特性、その中でも特に不注意特性がインターネット依存状態の維持や調査期間内での新たな発生に関連していることが明らかになった。
これらの知見は、インターネット依存問題を持つ子どもの発達特性を評価することの重要性を示唆しており、発達特性に関連した困難にアプローチすることが子どものインターネット依存を改善したり、その発生を予防したりすることに役立つ可能性がある。「今後も調査を続け、子どもの心の問題の発生メカニズムを明らかにし、心の問題を予防するための仕組みづくりシステムの開発に貢献していきたい」と、研究グループは述べている。
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