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タンパク質CNOT3、糖尿病発症に関わる遺伝子発現を抑制-OISTほか

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2020年09月01日 PM12:00

インスリン産生細胞異常の原因となる遺伝子発現を抑制、血糖値の制御に重要な役割

(OIST)は8月31日、ヒトの全身で発現しているタンパク質「」が、血糖値の制御に重要な役割を果たしていることを明らかにし、CNOT3が糖尿病の発症に関係するインスリン産生細胞における異常の原因となる遺伝子の発現を抑制することがわかったと発表した。この研究は、ディナ・モスタファ博士(OISTの元博士課程学生)、栁谷朗子博士、山本雅教授、インペリアル・カレッジ・ロンドンのEleni Georgiadou博士、Guy A. Rutter教授、理化学研究所生命医科学研究センターのYibo Wu博士と鈴木亨博士、ラフバラー大学のTheodoros Stylianides博士らの研究グループによるもの。研究成果は、「Communications Biology」に掲載されている。


画像はリリースより

糖尿病は、体内のインスリンが不足した場合や、インスリンに対する感度が悪くなった場合に発症する疾患で、高血糖を引き起こし、腎不全や心臓病、視力低下などの深刻な健康問題につながる恐れがある。通常、インスリンの働きによって細胞はブドウ糖を取り込み、エネルギー源として利用するが、インスリンがなければ、ブドウ糖は血液中に蓄積される。主にインスリン不足は、インスリンを生合成・分泌する膵β細胞の機能障害が原因となっている。

CNOT3は、全身の多くの臓器で発現しており、各組織で様々な遺伝子を制御している。CNOT3は、いくつかの異なるメカニズムを介して適切な量のタンパク質を産生したり、特定の遺伝子の発現を抑制したりすることで細胞の生存や健康状態、機能維持に関与している。

CNOT3膵β細胞特異的欠損マウス、12週齢で重度な糖尿病発症

膵β細胞は膵島に存在するため、研究グループは、マウス膵臓から採取した膵島の機能を研究した。まず、糖尿病マウスと非糖尿病マウスで、CNOT3の発現に違いがあるのかを調べた。その結果、糖尿病性膵島では非糖尿病性膵島と比較し、CNOT3のタンパク質量が大きく減少していることがわかった。

次に、CNOT3の膵β細胞特異的な生理機能を調べるために、CNOT3を膵β細胞特異的に欠損させたマウスを作製。このマウスにおける糖代謝は、4週齢では正常に機能したが、8週齢では耐糖能障害を発症し、12週齢のマウスは重度な糖尿病を発症した。

CNOT3がmRNAを不安定化させ、遺伝子スイッチオフ状態が保たれる可能性

今回、CNOT3がない場合、正常な膵β細胞でスイッチがオフになっているはずのいくつかの遺伝子のスイッチがオンになり、タンパク質発現が増大することが明らかになった。これらの遺伝子は一度スイッチが入ると、グルコース応答性インスリン分泌ができなくなってしまうなど、膵β細胞にあらゆる障害を引き起こすため、正常な膵β細胞では抑制されている。

この現象の分子メカニズムをさらに研究したところ、CNOT3と通常はスイッチオフされている遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)との間に関連性があることが明らかになった。mRNAは遺伝子配列に対応する一本鎖の分子であり、タンパク質の合成に不可欠なものだ。

正常な膵β細胞では、これらの遺伝子のmRNAはほとんど発現しない。しかし、CNOT3が取り除かれると、これらmRNAがはるかに安定化することが判明。実際に、安定化したmRNAからはタンパク質が産生され、正常な膵β細胞の機能に好ましくない影響を与えていたという。このことは、CNOT3がmRNAを不安定にすることで、これらの遺伝子がスイッチオフ状態に保たれる可能性があることを示す。

モスタファ博士は今回の研究成果について、「正常な膵β細胞の恒常性維持の為に必要な分子機構の解明に向けた一歩であり、最終的には、糖尿病に対する新規予防法と治療法の開発に貢献する可能性がある」と、述べている。

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