医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > COVID-19、IL-6による肺炎重症化の仕組みに血管から放出されるPAI-1が関与-阪大

COVID-19、IL-6による肺炎重症化の仕組みに血管から放出されるPAI-1が関与-阪大

読了時間:約 1分26秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年08月27日 AM11:45

コロナ性肺炎の重症化に炎症性サイトカインIL-6が関与、その仕組みは?

大阪大学は8月24日、新型コロナウイルス感染により早期にIL-6が血中に増加し、このIL-6が血管から血液凝固を促進する分子 Plasminogen Activator Inhibitor-1()を放出させることを発見したと発表した。この研究は、同大免疫学フロンティア研究センター(IFReC)免疫機能統御学の姜秀辰(カン・スジン)助教、岸本忠三特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

世界中に蔓延する新型コロナウイルス感染症()とそれに起因する肺炎の重症化は人類の健康・福祉にとって克服すべき大きな課題だ。新型コロナウイルス感染性肺炎の重症化には炎症性サイトカインIL-6が関与しており、その機構を解明するのは重要と考えられる。

細菌性敗血症に匹敵のPAI-1レベル、多臓器で血栓ができ液性成分漏出で重症化

今回、研究グループは、新型コロナウイルス感染により早期にIL-6が血中に増加し、このIL-6が血管から血液凝固を促進する分子「PAI-1」を放出させることを発見した。PAI-1は、血管内皮細胞や肝臓、血小板などに存在し、血管内皮障害や血小板の崩壊により血中に放出される。血中で高い値を示す場合、血栓の溶解を阻害し血栓の成長を促進する危険因子となる。

COVID-19患者のPAI-1レベルは、細菌性敗血症または重症熱傷の患者に匹敵する高さだった。このことが、肺をはじめとする多くの臓器で血栓を作らせ、血管から液性成分を漏出させ、炎症の重症化につながる。この事実は実験室系(In vitro)で血管内皮細胞をIL-6で刺激するとPAI-1が誘導されることで確認された。また、この現象はIL-6の働きをブロックする抗体医薬品トシリズマブ(製品名:(R))により抑えられた。今回の成果から、研究グループは、「新型コロナウイルス感染においてはIL-6が上昇する早期にアクテムラによってPAI-1の産生を抑えることが有効な治療になると予測される」と、述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 白血病関連遺伝子ASXL1変異の血液による、動脈硬化誘導メカニズム解明-東大
  • 抗がん剤ドキソルビシン心毒性、ダントロレン予防投与で改善の可能性-山口大
  • 自律神経の仕組み解明、交感神経はサブタイプごとに臓器を個別に制御-理研ほか
  • 医学部教育、情報科学技術に関する13の学修目標を具体化-名大
  • 従来よりも増殖が良好なCAR-T細胞開発、治療効果増強に期待-名大ほか