脳卒中の病型予測を救急搬送時に行えるシステム
兵庫医科大学は8月26日、救急隊員などが脳卒中の疑いがある患者の病型予測を瞬時に行える病院前脳卒中病型判別システム「JUST Score」(2018年同大が開発)の改良版として、「JUST-7 Score」を開発したと発表した。これは、同大脳神経外科学講座の吉村紳一主任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Prehosp Emerg Care」に掲載されている。
画像はリリースより
「JUST Score」は、救急隊員が救護現場で脳卒中の種類を容易に見分けることができるシステム。同システムを利用できるアプリから、年齢やけいれんの有無など、救急搬送患者に関する評価項目をチェックするだけで、高い判別度で脳卒中の病型を瞬時に予測することができる。すぐに画像検査が行えない発症現場で使用することで、脳卒中の疑いがある患者を、適切な治療施設へ直接搬送できるようになった。また、複数の脳卒中の病型を予測するモデルの開発は当時としては世界初であった。
評価項目を21から7つに、作業時間短縮でより早い治療開始を目指す
前モデルの使用により、脳卒中の疑いがある患者を早い段階で治療施設へ搬送できるようになったが、評価する症候が21項目あり、脳卒中の判別に一定の作業時間が必要であった。今回の新モデルは、7項目をチェックするだけで判別できる仕様になっており、作業時間が短縮され、より早く治療施設に搬送できるようになった。その結果、より多くの患者に対して、脳梗塞だけでなく、脳出血、くも膜下出血という一刻を争う専門的治療が可能になったという。
新モデルで評価する7項目については、前モデルの「JUST Score」の開発時に収集した2,236例をもとに、救急隊員が発症現場で評価可能な項目(年齢、収縮期血圧、拡張期血圧、不整脈、けいれんなど)を用いて、より少ない項目で判別できるか再解析をした。その結果、7項目でほぼ同程度の判別能力を有することが示唆されたため、新たに収集した964例を用いて病型判別能力を検証した。
「今後、ウェブ上でJUST-7 Scoreを利用可能にすることで、救急隊員のみならず、開業医などでも、発症直後から脳卒中の有無や病型の予測を簡便に行えるようにしたい。さらに、世界中の医療従事者が利用できるように、英語版も作成する予定である。病院前脳卒中病型判別の的中率を上げるために、さらなる継続的な研究・開発に努めたい」と、研究グループは述べている。
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