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新型コロナ「超高感度抗原検査法」を開発、PCR検査より安価で簡易な手法-早大ほか

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2020年08月20日 PM12:15

、検出感度不足やウイルスの新型・従来型の区別が難しいなどの課題

早稲田大学は8月19日、従来のPCR検査の手法を大幅に簡略化した、ウイルス検出感度が高い、新たな「超高感度抗原検査法(以下、新たな検査法)」の開発に成功したと発表した。この研究は、同大教育・総合科学学術院の伊藤悦朗教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Diagnostics」に掲載されている。


画像はリリースより

これまで、研究グループは株式会社タウンズと、ELISA法と酵素サイクリング法を組み合わせた極微量タンパク質の超高感度定量測定法の開発に取り組んできた。この超高感度定量測定法を応用することで、2019年には、尿中ではほとんど検出不可能なタンパク質のアディポネクチン検出に成功し、慢性腎臓病の進行に伴って、尿中のアディポネクチン濃度が上昇することを見出し、糖尿病の治療に新たな指針を与えることができたという。

新型コロナウイルス感染症の検査方法としてはPCR検査が良く知られているが、中核病院や保健所などでの実施が必要となり、一般のクリニックではなかなか実施できないのが現状だ。一般のクリニックでは、その代わりとなる、迅速で簡単な「抗原検査」の利用が待望されている。しかし、これまでの抗原検査には、検出感度が不足していること、ウイルスが検出できた場合でもそのウイルスが新型か従来型であるかの区別がしづらいこと、という問題がある。

これらの問題を解決するために、研究グループは超高感度定量測定法を新型コロナウイルスに適用し、超高感度でタンパク質を検出することに成功。この超高感度定量測定法が新型コロナウイルス感染症の抗原検査(すなわちタンパク質検査)として応用可能であることを見出した。

特別な機器は不要で試薬類もPCRに比べ安価、検査感度はPCR検査に肉薄

まず、研究グループは新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を特異的に認識する抗体を2種類用意し、その2種類の抗体で新型コロナウイルスのスパイクタンパク質をサンドイッチ方式で挟み込んだ。1種類の抗体には酵素のアルカリホスファターゼを標識しておき、そこにリン酸基がついた基質を作用させ、アルカリホスファターゼの働きによって、その基質からリン酸基が外れる。次に、その基質をチオNADサイクリング法で増幅する。サイクリングでは水酸化ステロイド脱水素酵素が中心の酵素となり、それ以外にNADHやチオNADを加えておくことで、サイクリング中にチオNADHが溜まっていく。このチオNADHの吸光度変化(405nm)を測定することで、元の新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が測定できる。

吸光度変化を測定するだけなので、特別な機器は不要となり、多くの実験室に備わっているマイクロプレートリーダーで検査でき、迅速に、かつ、特定の波長の光の吸収変化を測定するだけで新型コロナウイルスを検出できるという。これは、比色法と呼ばれる検査方法で、一般クリニックでもすぐに実施できる測定方法だ。基本的に臨床検査技師が行うPCR検査とは異なり、新たな検査法は医師や看護師でも実施できる。

試薬についてもPCR検査で使用されているものと比較すると安価で、PCR検査の場合2~3万円程度必要なところを、新たな検査法では2~3,000円程度の費用に抑えることを目指す。あわせて、将来的には約30分程度でウイルス検出できることを目指すとしている。

また、タンパク質の数とRNA量とを換算し、新たな検査の感度はPCR検査に肉薄するものだということもわかったという。

吸光度を測定するだけ、クリニックでの検査も可能に

PCR検査は、感度が良いものの、検出結果が出るまで2日程度の時間を要すること、技術的な問題で偽陰性が出やすいこと、活性を持たない死んだウイルスも検出し陽性判定となる場合があること、どこのクリニックでも実施できるわけではないので中核病院や保健所の臨床検査技師への負担が大きいこと、などの問題がある。新たな検査法を用いれば、吸光度を測定するだけで、一般のクリニックでも検査が可能になるという。新型コロナウイルス感染症に対する、迅速・簡単・安価・高特異性・高感度の「抗原検査法」として利用可能だとしている。

早稲田大学にはバイオセーフティーレベル3の実験室がないことから、研究グループは今後、公的研究機関などの協力を得て、実際の患者検体での測定を早急に試す必要がある、と述べている。

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