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成人T細胞白血病・リンパ腫、従来法より迅速かつ正確な新規診断法を開発-琉球大

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2020年08月19日 PM12:30

沖縄県で高頻度に発生、予後不良な血液腫瘍ATLL

琉球大学は8月18日、)の原因ウイルス「」を顕微鏡で直接見る技術を開発したと発表した。この研究は、同大医学研究科の加留部謙之輔教授、髙鳥光徳大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、米国カナダ病理学会の公式学術誌「Modern Pathology」誌に掲載されている。


画像はリリースより

ATLLは、HTLV-1に感染したリンパ球ががん化することで発症する、極めて予後不良な血液腫瘍。日本においては、特に沖縄県で高頻度に発生している。

ATLLの診断では、細胞診または組織診による異型リンパ球の同定に加え、サザンブロット法でHTLV-1感染細胞のクローン性増殖を確認する。サザンブロット法に使用する検体は通常、新鮮生もしくは凍結された末梢血や組織片であり、比較的大量に必要なため、少量の生検試料や病理診断で汎用されるホルマリン固定検体では検査できない。さらに、その検査手技が煩雑で、一般の病院検査室では実施されない。その結果、サザンブロット法を施行できず、再生検や診断保留となる症例がしばしば見受けられる。そのため、これらを解決する新規のATLL診断法が望まれている。

HTLV-1に対するRNA in situ hybridization法と定量PCR法を組み合わせて

加留部謙之輔教授らの研究グループは、同血液免疫検査学講座の福島卓也教授らが運営する沖縄HTLV-1/ATLバイオバンクの試料などを用いて、ホルマリン固定検体に特化した新規ATLL診断アルゴリズムを開発した。

同診断アルゴリズムは、HTLV-1由来の転写産物を標的とした超高感度RNA in situ hybridization法と、ウイルス感染細胞数を定量するリアルタイムPCR法の2つの検査法を組み合わせたもの。前者の方法では、組織内のHTLV-1感染細胞を可視化することができ、ATLL細胞を容易に検出可能で、腫瘍の浸潤範囲も容易に判別できた。一方、後者の方法では適切なカットオフ値を設定することにより、ATLLと非ATLLを鑑別することができたという。

全119症例において、感度・特異度ともに100%の診断

今回、研究対象の全119症例において同診断アルゴリズムを用いた結果、感度・特異度ともに100%の正確な診断が可能だったという。今回の研究により、従来のサザンブロット法に頼らない、より迅速かつより正確な検査法が開発されたとしている。

ウイルス関連腫瘍の診断では、その組織内での直接的なウイルス同定が極めて決定的な役割を担う。HTLV-1に関しては、今回の研究で初めて診断として活用できるものとなり、今後ATLLの早期発見や早期治療につながることが期待される、と研究グループは述べている。

また、同診断アルゴリズムによる検査は、これまでに、沖縄県内の琉球大学病院、南部医療センター・こども医療センター、ハートライフ病院、中頭病院、中部徳洲会病院などの医療施設や、県外(神奈川県など)、国外(台湾)からの症例を含む約70例の診断において施行されている。

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