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肝がんの血管新生阻害剤またはTACE治療、早期にがん微小環境の免疫に影響-大阪市大

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2020年08月07日 AM11:45

肝がん患者の血液で、16種類の可溶性免疫チェックポイント分子を測定

大阪市立大学は8月5日、血管新生阻害剤レンバチニブまたは肝動脈化学塞栓術(TACE)の治療を受けた肝がん患者の血液で、16種類の可溶性免疫チェックポイント分子を測定したところ、治療導入の1週間後に複数の分子の濃度が有意に変化していることを発見したと発表した。この研究は、同大大阪市立大学大学院医学研究科・肝胆膵病態内科学の河田則文教授、榎本大准教授、小田桐直志病院講師らの研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「Cancers」に掲載されている。

従来から肝がんに対する治療法として、外科手術、ラジオ波焼灼療法、TACEなどが行われてきた。これに加え全身化学療法として、2009年にソラフェニブが承認されて以降、、ラムシルマブなど、がん細胞が増殖するために必要な血流を遮断する血管新生阻害剤が使用されている。

一方、近年はがん免疫療法も目覚ましく進歩している。一例として、2018年にノーベル医学生理学賞を授与された京都大学の本庶佑名誉教授と米テキサス大学のジェームズ・アリソン教授は、免疫の司令塔であるTリンパ球表面にPD-1またはCTLA-4という分子を発見し、これをもとにオプジーボなど免疫チェックポイント阻害剤が開発された。免疫チェックポイント阻害剤は肝がんに対しては承認されていないが、血管新生阻害剤やTACEなど既存治療を併用することで相乗効果が得られ、今後、第一選択薬になる可能性がある。

こうした既存治療と免疫チェックポイント阻害剤の併用治療については、臨床試験でも有望な結果が出ている一方、これら既存治療ががん微小環境の免疫状態にどのように影響しているのかについては不明な部分が多い。


画像はリリースより

免疫チェックポイント阻害剤と既存治療併用の肝がん治療法開発に期待

研究グループは、血管新生阻害剤レンバチニブまたはTACEで治療を受けた肝がん患者の血液で、PD-1、CTLA-4をはじめ16種類の可溶性免疫チェックポイント分子の濃度を測定した。その結果、レンバチニブで治療を行った患者では、1週間後に早くもsCD27が有意に低下、sCD40、sTIM-3が有意に上昇していることが判明。また、各免疫チェックポイント分子の変化に関する相関を解析したところ、sCTLA-4とsCD86/sCD80、sPD-1とsPD-L1など、受容体とリガンドの関係にある分子同士で相関がみられた。これらの結果は、レンバチニブが、がん微小環境の免疫状態に影響している可能性を示している。

続いて、TACE治療例でも、sCD27、sCD40、sTIM-3含む8種類の可溶性免疫チェックポイント分子の濃度が変化していることがわかった。この結果は、TACEもまた、がん微小環境の免疫状態に影響を与える可能性を示している。

研究グループでは、以前に血管新生阻害剤ソラフェニブでも同様の解析を行い、ソラフェニブががん微小環境の免疫状態に影響を与えることを示している。今回の結果からレンバチニブやTACEによる治療もがん微小環境への作用を有していることが明らかになった。これらの治療法のがん微小環境修飾機序をより詳細に解析することで、今後、血管新生阻害剤やTACEと免疫チェックポイント阻害剤を併用した、より効果的な肝がん治療法の開発につながる可能性がある。

免疫チェックポイント阻害剤は一部の患者に著効が得られる反面、その効果が予測しにくいこと、重篤な副作用がみられる場合があること、薬価が高いことなどが問題になっている。先行研究では、特定の分子の変動が患者の予後予測に有用であったことも見出している。研究グループでは今回の研究成果を足がかりに、より効果的な血管新生阻害剤やTACEと免疫チェックポイント阻害剤との併用治療の開発、より精度が高く治療効果を予測できるマーカーの開発につなげたい、と述べている。

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