新型コロナウイルス感染症には6つの“タイプ”がある?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)には、特定の症状クラスターにより明確に区別できる、6つの“タイプ”があるとする研究結果が、英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のClaire Steves氏らにより報告された。それぞれのタイプは、重症度や、入院中の呼吸の補助の必要度も異なることも明らかになったという。
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この研究は、COVID-19に関連した症状を報告するためのアプリ「COVID Symptom Study」にユーザーが記入したデータを解析したもの。COVID-19の主な症状として強調されているのは、持続する咳、発熱、および嗅覚障害である。しかし、このアプリの使用者からは、これ以外にも、頭痛や筋肉痛、疲労感、下痢、錯乱、食欲不振、息切れなど、多岐にわたる症状が報告されただけでなく、病状の進行と転帰も人により大きく異なっていた。
Steves氏らは、同時に出現しやすい症状や、それが病状の進行に及ぼす影響を調べるために、機械学習のアルゴリズムを用いて、COVID-19と診断され、3~4月に症状を報告した英国および米国のアプリ使用者1,653人のデータセットを解析した。その結果、病状の進行過程のある特定の時点で生じている症状により、COVID-19を6つのクラスターに分類できることが分かった。次いで、このアルゴリズムを、5月にCOVID-19の症状を報告した英国、米国、およびスウェーデンのアプリ使用者1,047人のデータセットで検証したところ、その有効性が裏付けられた。
6つの症状クラスターを重症度の低い順から並べると、以下の通りになる。
1)発熱を伴わないインフルエンザ様症状:頭痛、嗅覚障害、筋肉痛、咳、喉の痛み、胸痛、発熱なし。
2)発熱を伴うインフルエンザ様症状:頭痛、嗅覚障害、咳、喉の痛み、嗄声、発熱、食欲不振。
3)消化器症状を伴う症状:頭痛、嗅覚障害、食欲不振、下痢、喉の痛み、胸痛、咳なし。
4)重症度1(倦怠感):頭痛、嗅覚障害、咳、発熱、嗄声、胸痛、倦怠感。
5)重症度2(錯乱):頭痛、嗅覚障害、食欲不振、咳、発熱、嗄声、喉の痛み、胸痛、倦怠感、錯乱、筋肉痛。
6)重症度3(腹部・消化器症状):頭痛、嗅覚障害、食欲不振、咳、発熱、嗄声、喉の痛み、胸痛、倦怠感、錯乱、筋肉痛、息切れ、下痢、腹痛。
次に、特定の症状クラスターが出現している患者での、呼吸の補助の必要性が検討された。その結果、換気または酸素供給による呼吸の補助を必要とした患者の割合は、症状クラスター1~6の順に、1.5%、4.4%、3.7%、8.6%、9.9%、19.8%であることが明らかになった。また、最終的に入院が必要となった患者の割合は、クラスター1で16.0%であったのに対し、クラスター6では45.5%に上ることも明らかになった。
Steves氏らはさらに、年齢や性別、BMI、既存疾患といった情報と、COVID-19発症から5日間における症状を組み合わせた予測モデルを構築した。このモデルを用いて、患者の転帰(どの症状クラスターに該当するか、入院や呼吸補助の可能性)を検討したところ、年齢と性別、BMI、既存疾患などの既存リスクのみに基づいたモデルよりも正確に予測できることが分かった。
Steves氏は、「今回の研究結果が、COVID-19が最も重症化しやすい人のケアとモニタリングにおいて意味するところは非常に大きい」とし、「COVID-19の発症5日目に、患者がどのクラスターに分類されるのかを予測できれば、サポートの提供、血中酸素濃度や血糖値の監視、適切な水分補給といった早期介入を行う時間を持つことができる。自宅でも実施可能なこのような簡単なケアが、患者の入院を防ぎ、命を救うことにつながる」と述べている。
なお、この研究結果は、査読前の論文のオンラインアーカイブである「medRxiv」に6月16日に掲載されたものであり、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的な結果とみなす必要がある。
▼外部リンク
・Symptom clusters in Covid19: A potential clinical prediction tool from the COVID Symptom study app
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