高齢者対象の調査を4段階に分けて実施、調査からの脱落の段階とその関連要因を検討
東京都健康長寿医療センター研究所は8月4日、地域在住高齢者への郵送調査の未応答者に対して、簡易調査、はがき調査、訪問調査といった追跡調査を段階的に実施し、調査からの脱落の段階とその関連要因を検討した結果、日常生活動作能力の低下や社会活動への不参加が脱落と関連することが明らかとなったと発表した。この研究は、同大センター研究所の大渕修一研究部長らの研究グループによるもの。研究成果は、国際雑誌「PLOS ONE」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
研究グループは、「これまでに行っていた活動をやめた」「外出が減り閉じこもりがちになった」などの高齢期の「社会からの離脱」について、突然起こるわけではなく段階があるのではないかと仮説を立てた。そして今回、社会からの段階的な離脱を反映する指標として「調査からの脱落の段階」に関する要因を調査した。
東京都板橋区の65~85歳の地域在住高齢者への郵送調査の回答者3,696人に対して、2年後に追跡郵送調査を行い2,361人が回答した(脱落レベル0)。その未応答者には項目数を24から10に減らした簡易調査を実施し462人が回答した(脱落レベル1)。その未応答者には5項目のはがき調査を実施し234人が回答した(脱落レベル2)。さらにその未応答者には訪問調査を実施し84人が応じた(脱落レベル3)。どの調査にも応答しなかったのは101人だった(脱落レベル4)。
脱落レベルが最も高い人は社会的に孤立し、町内会活動へ不参加
調査の結果、脱落レベルが上がるほど、初回郵送調査時の日常生活動作能力、社会活動参加率、主観的健康感、主観的経済状況が低く、社会的孤立者が多い傾向があった。脱落レベルの最も低いレベル0の人と比較すると、レベル1、2の人は日常生活動作能力が低く趣味活動へ不参加であり、レベル3の人はスポーツ活動へ不参加であることが判明。さらに、脱落レベルの最も高いレベル4の人は、社会的に孤立しており、町内会活動へ不参加であることが明らかになったという。
これまでに、今回の研究のように調査未応答者に対して丁寧な追跡を行った研究は国際的にも例がないという。同研究は高齢期における社会からの離脱の段階とその要因を初めて浮き彫りにし、高齢者が調査に回答するために必要なアプローチが、脱落のレベルによって異なることも示した。
研究グループは、日常生活動作能力低下や社会活動への不参加について、より丁寧なアプローチを行わないと離脱する状態へつながるとし、周囲との交流の減少や町内会活動への不参加は、将来的な社会からの離脱の危険信号だと述べている。
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・東京都健康長寿医療センター研究所 プレスリリース