血管と脳とは、簡単には物質のやりとりができないようになっています。この仕組みは、「血液脳関門のバリア機能」などと呼ばれています。一方、この働きが様々な治療薬の開発の妨げになることもあります。脳に届いて欲しい薬が、バリアを超えられないことがあるからです。
(この画像はイメージです Carlos Porto/FreeDigitalPhotos.net)
ところが、スウェーデンのカロリンスカ研究所が行ったアルツハイマー病に関する研究の結果、オメガ3脂肪酸はこのバリアを超えられることが明らかになったのです。オメガ3脂肪酸は、青魚などに含まれる「身体に良い」と言われる油です。
これまでに行われた調査から、オメガ3脂肪酸がアルツハイマー病の予防に役立つことが明らかになってきていました。今回の調査は、アルツハイマー病をすでに発症している人に対して、オメガ3脂肪酸が何らかの効果を及ぼすかどうかを調べたものでした。
調査に参加したのは33名の軽度アルツハイマー病の患者さんです。18人が毎日オメガ3脂肪酸のサプリを飲み、15人はプラセボを飲みました。すると、オメガ3脂肪酸を飲んでいた人たちでは、脳からの神経を取り囲む液体、脳脊髄液に含まれるオメガ3脂肪酸の濃度が高くなっていました。このことから、オメガ3脂肪酸は、血液の中に取り入れられた後に、バリアを超えて脳神経に届けることができる物質であることが分かりました。
また、これまでに、アルツハイマー病の患者さんでは、炎症の反応が見られることが多いことが知られていましたが、脳脊髄液の中のオメガ3脂肪酸の濃度が、アルツハイマー病の度合いと、炎症反応の度合いの両方に関連していることが分かったのです。
このことから、オメガ3脂肪酸がアルツハイマー病の治療に効果がある可能性もあるとして、今後さらなる調査が行われることになりそうです。日常的に口にできる食品中にも含まれるオメガ3脂肪酸。自然は私たちがこれまで考えていた以上に大きな恵みを与えてくれていたようですね。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
Omega-3 dietary supplements pass the blood-brain barrier
http://ki.se/ki/jsp/polopoly.jsp
Transfer of omega-3 fatty acids across the blood brain barrier after dietary supplementation with a docosahexaenoic acid (DHA)-rich omega-3 fatty acid preparation in patients with Alzheimer’s disease
http://dx.doi.org/10.1111/joim.12166