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食道がん転移リンパ節の病理判定、原発巣より正確に術前化学療法の効果反映-阪大ほか

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2020年07月31日 PM12:30

食道がんでは転移リンパ節の程度が予後への影響大

大阪大学は7月28日、手術で切除した食道がん転移リンパ節において術前化学療法の治療効果を病理学的に判定する方法を確立し、それが術後の再発や予後を従来よりも正確に予測することを明らかにしたと発表した。これは同大大学院医学系研究科の萩隆臣医員、牧野知紀助教、土岐祐一郎教授(消化器外科学)、森井英一教授(病態病理学)らの研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「Annals of Surgery」に掲載されている。


画像はリリースより

進行した食道がんでは特にリンパ節への転移を高率で伴い、一般的に抗がん剤治療を行った後に手術を行う。しかし、同じ手術を施行しても、術前抗がん剤の治療効果が大きい症例は良好な術後の予後が得られることがわかっている。そのため、正確な治療効果の判定が重要と考えられている。

日常診療における術前治療の病理学的な効果判定は、通常、原発巣を対象としており、治療前の腫瘍面積に対する治療後に残った腫瘍面積の割合で評価される。この評価では残存した腫瘍の割合が小さいほどGradeが高く、すなわち化学療法の効果が大きかったことを表す。また、このGrade分類が術後の再発や予後の重要な指標になることが分かっている。一方、食道がんでは原発巣の進展以上にリンパ節転移の程度がより強く予後を反映することが知られている。そこで研究グループは、転移リンパ節における治療効果判定の方が(原発巣の判定より)正確に予後を反映するのではという仮説を立て、検討を行った。

約6割で原発巣と転移リンパ節における病理学的治療効果が異なっていた

今回、術前に抗がん剤治療を行い、根治手術を施行した胸部食道がん371例のうち、治療前にリンパ節転移を疑う所見を認めなかった52例を除外した計319例を対象に、抗がん剤治療の治療効果を病理学的に判定した。主病巣の病理学的治療効果判定として、残った腫瘍の割合別に4段階のGradeで分類し(Grade I:50%>、Grade II:10-50%、Grade III:<10%、Grade IV:0%)、Grade I、II を非奏効群、III、IVを奏効群とした。

一方、リンパ節は原発巣と異なり、同一症例で転移が複数に及んだ際にリンパ節によって異なる治療効果を示す場合など一定の治療効果判定基準を定めることが難しいといった問題点がある。実際に、約6割の症例では同一症例で各転移リンパ節における治療効果は同一だったが、それ以外の症例ではリンパ節間で治療効果が異なるという結果だった。

そこで、各症例におけるすべての転移リンパ節の治療前の腫瘍面積と治療後の残存腫瘍面積を足し合わせることで前述の4段階に分類し、「総合grade」として評価するという独自の効果判定基準を樹立した。その結果、転移リンパ節の治療効果判定は、奏効群153例(48.0%)、非奏効群166例(52.0%)と判定された。なお、191例(59.9%)の症例で原発巣と転移リンパ節における病理学的治療効果が異なっていた。

原発巣判定よりも転移リンパ節判定の方がより顕著に生存率を反映

予後に関する検討では、転移リンパ節の治療効果判定gradeによって段階的に成績が異なり、奏効群は非奏効群と比較して生存率が明らかに良いことがわかった。さらに、原発巣とリンパ節の病理学的な治療効果による予後曲線を比較すると、転移リンパ節の治療効果判定の方がより顕著に生存率を反映していた。生存期間における多変量解析では、リンパ節の病理学的治療効果判定が独立した予後因子であったが、原発巣の判定は予後因子にはならなかった。加えて、術後の再発形式に関する検討では、・リンパ節ともに非奏効群では奏効群と比較してリンパ行性再発や血行性再発(肺、肝臓、骨など)の頻度がそれぞれ高く、その傾向は原発巣よりもリンパ節における治療効果判定で顕著であった。

これらのことから、転移リンパ節における病理学的な治療効果を判定することは、術前化学療法後に手術を施行した食道がんの術後予後予測や再発予測において優れていることが示された。「食道がん手術で切除した転移リンパ節において術前化学療法の病理学的な治療効果が乏しいと判定されたケースでは、たとえ原発巣の治療効果が良好であったとしても再発のリスクが高い。より強力な術後補助療法を行うなどオーダーメイド治療の確立に大きく貢献し、最終的に食道がん全体の治療成績の改善につながるものと期待される」と、研究グループは述べている。

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