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生きたままのヒト組織を立体観察する技術を開発、がん診断応用に期待-阪大ほか

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2020年07月28日 PM12:45

生検における課題、妊婦で子宮頸部組織採取はリスクも

大阪大学は7月23日、子宮頸部を生きた組織のまま、ホルマリン固定や染色を行わずに、リアルタイムに3次元で観察できる方法を開発し、人工知能(AI)による画像解析を併用することで、子宮頸がんやその超早期病変を定量的に分類することができたと発表した。これは、同大大学院医学系研究科免疫細胞生物学の石井優教授、病態病理学の松井崇浩助教、産科学婦人科学木村正教授と、九州大学大学院医学研究院婦人科学産科学の加藤聖子教授、株式会社ニコンの清田泰次郎氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cancer Research」のオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

がんの最終診断には、病理診断が不可欠だ。しかしこの方法は、採取する組織片の量により、診断の精度が左右される。採取量が少ないと診断が確定できないことがある一方で、採取量を多くすると患者への負担が大きくなり、まれではあるものの合併症を生じることがある。また子宮頸がんの場合、患者が同時に妊娠していることもあり、妊娠中に子宮頸部の組織を採取することはリスクが高い。さらに従来の病理診断では、採取した組織片からガラス標本を作製するまでに、ホルマリン固定や染色など多くの処理工程が必要なため、患者が検査を受けてから診断できるまでに、時間がかかることも課題だ。

子宮頸部の組織を可視化、AI解析で正常/上皮内/浸潤の画像を定量的に分類

研究グループは、最新の生体可視化ツールである多光子励起顕微鏡を用いて、ヒトの組織の観察を行った。これは、近赤外線により生じる組織深部の蛍光を検知し、組織を傷つけることなく、深い部位まで可視化できる技術だ。この技術を応用し、組織の切り取りや、ホルマリン固定や染色などの処理を一切行わずに、生きた状態の子宮頸部組織を3次元で観察できる方法を開発した。

具体的には、超短パルスレーザーを用いて近赤外線を組織に当て、非線形光学現象による蛍光シグナルを利用して可視化するもの。この方法を用いると、組織を切り取ったり染色試薬を用いたりしなくても、「細胞の核」と「細胞周囲の線維」を詳細に描出することができる。従来の病理診断と比べて、低侵襲で、しかもリアルタイムに組織画像を得られるのが、この方法の大きな特徴。さらに、この画像をAIで解析することで、子宮頸部の正常組織、上皮内がん(非浸潤がん)、浸潤がんの画像を、定量的に分類できることもわかった。

今回用いたイメージング技術を、医療機器へ応用することで、従来の方法よりも低侵襲・迅速・定量的ながん組織診断の実現が期待される。デジタル画像データが迅速に入手できるため、AIを介した診断にも適している。「海外でも、発展途上国など病理医を含む医療専門職が少ない地域にもIoTを介した組織診断を提供でき、全世界の人々を対象に、がん診断を展開できると考えられる」と、研究グループは述べている。(

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