適切な治療のため慢性心不全での心臓死や突然死リスクを正確に把握したい
金沢大学は7月20日、慢性心不全の突然死のリスクについて、人工知能の一分野である機械学習を活用することにより、心筋交感神経イメージングによる交感神経活動の指標である123I-MIBG検査の心臓集積度が重要な要素となっていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院先進予防医学研究科の中嶋憲一特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Nuclear Cardiology」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
心臓は、体の隅々に血液を送り込むポンプの役割を果たしており、心不全とは、この重要な働きが心筋症や心筋梗塞といった疾患のために低下して全身の血液循環が滞ってしまう状態をいう。特に先進諸国では、心不全が悪化して慢性的な心不全になる患者数が増加している。慢性心不全は心臓ポンプ機能が低下するだけでなく、中には突然死につながることもある。不整脈を感知して電気ショックを与え正常心拍に戻す目的で、予防的に身体内に植え込み型の装置を装着する治療法もあるが非常に高額だ。したがって、各患者が抱える心臓死や突然死のリスクの程度を正確に把握し、最適な治療を選択できるようにすることが重要な課題となっている。
2年間の追跡データから人工知能で心臓死や不整脈による突然死の確率を計算
今回、研究グループは、人工知能の一分野である機械学習を活用し、慢性心不全による心臓死と突然死のリスクを予測できるかについて検証。2年間の追跡調査のデータについて臨床的に利用できる検査結果や症状の13変数を用いて解析した結果、心筋交感神経イメージングにおける123I-MIBGの心集積が減少すると、心不全のリスクが高まることを発見した。また、突然死にはさらに複雑な特有のパターンがあることも明らかになり、心臓死や不整脈による突然死の確率を計算できるようになった。
今回の成果は、心筋交感神経イメージングと機械学習の組み合わせが、重篤な心不全の予後予測に有効であることを示すもの。研究グループは、「今後は心不全の患者におけるポンプ機能の低下や心不全死、突然死それぞれの危険性を予測する方法を活用して最適な治療法の選択が可能となることが期待される」と、述べている。
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