LIPH遺伝子変異の常染色体劣性遺伝、有効な治療法はなかった
名古屋大学は7月16日、AGAの治療薬でもある「ミノキシジル」を、LIPH 遺伝子変異による先天性乏毛症・縮毛症対象の特定臨床研究に用い、その有効性と安全性を評価したところ、「ミノキシジル」は研究参加者全員に効果を示し、半数の患者には高い有効性を示したと発表した。この研究は、同大医学部附属病院の滝奉樹病院助教、同大医学系研究科皮膚科学の秋山真志教授、藤田医科大学皮膚科学講座の杉浦一充教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Dermatology」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
先天性乏毛症・縮毛症は、生まれつき髪の毛の量が少なく縮れ毛である遺伝性疾患で、常染色体劣性遺伝形式をとる。ホスファチジン酸という脂質を分解して、毛髪の成長や毛包の分化に必要なリゾホスファチジン酸を作り出す酵素「リパーゼH(LIPH)」の遺伝子変異が主な原因とされている。日本人は約100人に2人の割合でLIPH変異を持っており(保因者)、決してまれではない遺伝子変異だ。これまでは、この疾患に対する有効な治療法はなく、患者は、乏毛・縮毛を1つの個性として受け入れるか、あるいは、かつらを使用するなどの方法しかなかった。そのため、「ミノキシジル」の先天性乏毛症・縮毛症に対する有効性の確認を目的とした特定臨床研究に高い期待が寄せられていた。
小児5例を含む8例で特定臨床研究を実施し全例で奏功、4例で高い効果
名古屋大学医学部附属病院において2016年8月、LIPH遺伝子変異による先天性乏毛症・縮毛症を対象に、1%ミノキシジルローション外用(大正製薬株式会社提供)の特定臨床研究が開始した。小児5例を含む8例が登録され、1%ミノキシジルローション外用の有効性と安全性が評価された。その結果、8例全員において奏功がみられ、そのうち4例は高い効果がみられた。またミノキシジルの外用は小児での安全性が確立されていないため、同試験でその安全性を評価した。その結果、頭皮の乾燥、多毛、逆まつげなどの軽度の副作用は認めたものの、重篤な副作用は認めなかった。
先天性乏毛症・縮毛症では、標準的治療法が確立しておらず、有望な治療選択が増えたことは、同疾患における今後の治療に大きく寄与することが期待される。なお、ミノキシジルの外用は、現状では、安全性等の確認のための、小児を対象とした大規模な臨床試験が行われていないため、小児への使用について厚生労働省の承認を受けていない。
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