習慣的運動による高次認知機能改善、「個人差」に注目
筑波大学は7月3日、習慣的運動が認知機能に与えるプラスの効果は、もともと認知機能が低い子どもほど大きいことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大の紙上敬太准教授と神戸大学大学院人間発達環境学研究科の石原暢助教、米ノースカロライナ大学、スイス・バーゼル大学、米ノースイースタン大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Medicine」でオンライン掲載されている。
画像はリリースより
これまで研究グループは、健康な子どもを対象に運動トレーニングを実施したランダム化比較試験を実施し、習慣的運動によって、学力と密接に関わる高次認知機能が改善することを示してきた。一方で、他の研究グループの研究では、習慣的運動によって学力や認知機能に変化が見られなかったことを示しているものもある。しかし、なぜこのような矛盾した見解が得られているのかはよくわかっていない。
この矛盾した見解について、研究グループはいくつかの要因が関わっていると考え、今回の研究ではその中でも個人差に注目した。
認知機能が高い子ども、運動時間の増加で認知機能が低下せず
今回研究グループは、運動のプラスの効果が出やすい人と出にくい人がいるのかを明らかにするため、これまでに実施してきた3つのランダム化比較試験(合計292人、9~13歳)を対象に分析した。
その結果、運動トレーニング前にもともと認知機能が低かった子どもほど、運動トレーニングによる認知機能の改善が大きかったこと、運動トレーニング前から認知機能が比較的高かった子どもであっても、運動時間の増加によって認知機能が低下しなかったことが示された。
ADHDやASDに研究結果をそのまま適用できるかは、検討が必要
今回の研究では、学力と密接に関わることが知られている認知機能に焦点を当てている。このことから、研究グループは、同研究結果について「日常的に運動する機会を設けることが、脳の健全な発達や学力の向上に重要であることを示唆している」と、述べている。
また、同研究の分析では、健康な子どものみを対象にしているため、注意欠陥・多動性障害や自閉症スペクトラム症などの子どもたちに、今回の研究結果をそのまま適用できるかについては、さらなる検討が必要である、としている。
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