ビルテプソには、条件付き早期承認制度が適応され、第II相臨床試験までのデータで承認された。治験症例が限られることから、承認条件には全症例での使用成績調査の実施や有効性・安全性の確認を目的とした臨床試験の実施、国内レジストリを用いた調査の実施が義務づけられた。
日本新薬は、既に国際共同第III相臨床試験を開始している中、今回、共同で開発に取り組んだNCNPが多施設共同前向き研究として、新たにDMD患者レジストリを構築することになった。
レジストリには、DMD治療を行う全国の約30施設が参加する予定。各施設で半年ごとにDMD患者の評価を行い、歩行不能時期、人工呼吸装着時期、車いす使用時期、床からの起立時間、10メートルの歩行や走行時間、上肢機能などをレジストリに登録する。症状の長期的な変化を追跡し、DMDの病因・病態の解明を進めるだけでなく、ビルテプソなど医薬品製造販売後の長期的な有効性や安全性の評価に役立てる。
DMDは、筋肉細胞を支えるジストロフィン蛋白質の遺伝子変異が原因で、正常なジストロフィン蛋白質が産生されず、筋力が低下する遺伝性筋疾患。遺伝子変異は多岐にわたるが、同剤はmRNA前駆体のジストロフィン遺伝子エクソン53領域に結合することでエクソン53をスキップさせ、機能のあるジストロフィン蛋白質の産生を促して効果を発揮する。
小牧氏は「臨床試験ではジストロフィン蛋白質の発現や一部の運動機能に対する有効性が示されたが、6カ月間の観察データに過ぎない。DMDの進行は緩やかで、5年、10年観察することが重要。そうすることでビルテプソの意味を示せる」と語った。
一方、同社創薬研究所長の高垣和史氏は、DMD治療薬の水平展開について「現在、エクソン44を標的にした核酸医薬品の医師主導治験がNCNPで行われており、エクソン51、45、50、55を対象とした薬剤の開発も進めている」と言及。「これらも医薬品にできればDMD患者の41%を治療できる」と語った。
その先の治療薬開発については、NCNP神経研究所遺伝子疾患治療研究部長の青木吉嗣氏が「ジストロフィン遺伝子には変異が集中する部位がある。変異が集中するエクソン45から55をまとめてスキップする治療法を実用化できればDMD患者の50%程度を1剤で治療できる可能性がある」と強調。その効果を動物モデルで実証していると報告した。