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腎臓病で誘導される「三次リンパ組織」が予後予測マーカーになる可能性-京大

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2020年06月01日 PM12:00

腎臓病で誘導される三次リンパ組織の診断的価値は?

京都大学は5月29日、三次リンパ組織がさまざまな成熟段階で存在することを明らかにし、成熟度に基づいた三次リンパ組織のステージ分類を新たに確立し、同ステージがヒト・マウス腎臓において腎臓病の障害度を反映すること、治療により可逆性があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学研究科の柳田素子教授(兼・高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)主任研究者)、佐藤有紀特定助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Kidney International」のオンライン版に掲載されている。

血液透析患者数は年々増加し、医療的にも社会的にも大きな問題になっている。高齢者の腎臓病は若年者と比べて治りにくいことがわかっているが、研究グループはこの原因解明に取り組み、高齢マウスの腎臓病では「」が腎臓内に誘導されることで炎症が遷延し、腎臓の修復不全が起きることを以前に見出した。三次リンパ組織は高齢者の腎臓病以外にもさまざまな腎臓病で誘導されることが知られていたが、その診断的価値については一定の結論は得られていなかった。この背景には、これまでの三次リンパ組織の既報の多くが観察範囲の限られた腎臓の針生検を用いた解析に基づいたものであり十分な解析がなされていなかったこと、解析で得られた知見を検証するための三次リンパ組織の動物モデルがなかったことなどが考えられ、結果として三次リンパ組織の理解が不十分であるがゆえにその評価系が確立されていなかったことが最大の原因と考えられていた。


画像はリリースより

独自開発の動物モデルとヒト検体で検証、腎障害とともに三次リンパ組織は成熟していた

今回研究グループは、ヒト腎臓三次リンパ組織の統合的な理解を得る目的で、独自に開発したマウスの三次リンパ組織誘導モデルの解析、および外科的に切除された高齢者(60歳以上)腎細胞癌69症例(京大病院)の背景腎臓と、内科的治療では症状が改善せず腎臓の外科的切除を余儀なくされた腎盂腎炎16症例(ドイツ・アーヘン工科大学との国際共同研究)の組織解析を行い、ヒトにおける腎三次リンパ組織の組織評価系の構築に取り組んだ。

高齢マウスに腎障害を引き起こすと、三次リンパ組織は障害後慢性期から腎臓内に誘導され始め、その後次第に拡大すると共に質的な成熟を果たす。三次リンパ組織は最初T細胞とB細胞が明瞭な区別なく混在した集合体として発生するが(stage1 三次リンパ組織)、その後内部に濾胞状樹状細胞が誘導され、その細胞領域と一致してB細胞領域が形成される(stage2 三次リンパ組織)。さらに時間が経過すると一部のB細胞領域内に胚中心反応が観察されるようになる(stage3 三次リンパ組織)。興味深いことに軽度腎障害では未熟な段階で三次リンパ組織の成熟停止が起きるのに対し、重篤な腎障害では成熟度の高い三次リンパ組織まで誘導されることが確認された。さらに免疫抑制剤による介入により三次リンパ組織が顕著に縮小するとともに、そのステージが低下する(可逆性がある)ことも明らかとなった。

実際にヒト腎盂腎炎の組織解析を行ったところ、腎臓にさまざまな成熟段階の三次リンパ組織が同時多発しており、組織障害が重篤な部分ではより成熟度の高い三次リンパ組織が認められる一方で、障害が軽度な部位では三次リンパ組織の誘導は目立たず、形成された三次リンパ組織にも未熟なものの割合が高いことが確認された。さらに高齢者の解析においても、慢性腎臓病合併症例は非合併症例と比較して三次リンパ組織の数は有意に多く、より成熟度の高い三次リンパ組織の割合が多いことが確認された。興味深いことに、三次リンパ組織は基礎疾患の種類を問わず、同じ解剖学的部位に同じ成熟段階を経て誘導されることも明らかとなった。

以上のことから、三次リンパ組織の成熟度は腎臓の組織障害度を反映する新規腎障害組織マーカーとなり、治療介入の効果判定にも有用である可能性が示された。腎臓内科の診療では高齢者の腎臓病のみならず、ループス腎炎や血管炎、IgA腎症、移植の拒絶腎臓など三次リンパ組織が誘導される疾患は非常に多い。しかし、その病態生理には不明な点が多く、満足のいく治療成績を得られていないのが現状だ。研究グループは、「今回、三次リンパ組織を軸とした新たな腎臓病の評価系を確立したことによって、さまざまな腎臓病の病態解明につながり、重症度評価・治療法の選定などを含めた腎臓病の日常診療が前進することが期待される」と、述べている。

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