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LIC測定機器「LIC TRAINER」、ALS患者の呼吸療法実行に有用な可能性-NCNPほか

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2020年06月01日 PM12:15

研究機関で使用されていたLIC測定機器をNCNPが独自改良

)は5月28日、2016年に同センタートランスレーション・メディカルセンターの協力により当院で開発・提供したLIC TRAINER(R)(エルアイシートレーナー)を臨床で使用し、(Amyotrophic lateral sclerosis:)患者に対する呼吸療法として強制的な深呼吸(Lung Insufflation Capacity:LIC)を測定する新しい肺容量リクルートメント(Lung Volume Recruitment:LVR)機器の原著論文の内容について発表した。この研究は、同センター、病院身体リハビリテーション部の水野勝広部長、高橋祐二神経内科部長、寄本恵輔理学療法主任らの研究グループによるもの。研究成果は、「Progress in Rehabilitation Medicine」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

ALSは、原因不明かつ根治困難な疾患であり、呼吸障害が生命予後を規定する因子となる。ALSの呼吸障害は拘束性換気障害を呈することで肺・胸郭の柔軟性が低下し、低換気に伴い高二酸化炭素血症となるため、人工呼吸療法での対応が必要だ。しかし、球麻痺症状が加わると気道クリアランスが悪化し、人工呼吸療法が継続できない要因になる。また、これまで気管切開をしてしまうと肺・胸郭の柔軟性評価は行うことが困難だった。研究グループは、この課題を克服するため、(LT)を臨床で使用している。LTは、球麻痺症状の進行や気管切開をしていてもLVR手技としてLICの測定が可能であり、安全弁を内蔵している呼吸理学療法機器だ。

LTは、従来、研究機関で使用されていたLIC測定機器を、NCNPが幅広く臨床利用できるように独自に改良し、「加圧時にリークしないよう高密閉性を付加したこと」「高圧がかかった圧を解除する安全弁を装備し安全性を確保したこと」「ALS患者が自分で自発呼気弁をリークすることを可能にしたこと」などの新たな機能を付加し、使いやすくスタイリッシュなデザイン設計を施したもので、特許出願、商標登録済である。製造は、試作段階から同センターと共同開発を行い、LT関連技術の共同出願を行っているカーターテクノロジーズが行い、販売は星医療酸器が行なっている。

呼吸理学療法を受けたALS患者20人対象、LT使用によるLICの測定の有用性を検証

今回の研究では、ALS患者に対しLTを使用して、LICの測定の有用性を検証することを目的とした。研究には、2014年4月~2017年12月に呼吸理学療法を受けたALS患者20人が参加。肺活量(VC)、最大強制吸気量(maximum insufflation capacity:MIC)、および呼吸療法の開始時のLIC測定値を抽出し、患者を3つのグループ(グループA:VCを測定できない群、グループB:VCを測定できたが有効なMICを測定できなかった群、グループC:MICを有効に測定できた群)に分類。LICはすべてのグループで測定できた。

グループCにおいて、MICとLICの値の有意差を分析した結果、LICは、グループA(1人)、B(10人)、C(9人)で、それぞれVCは950ml、1,863±595ml、および2,980±1,176mlだった。グループAとBでは、VCまたはMICを測定できなかった場合でもすべての患者でLICを測定できたという。また、グループCにおいて測定されたLIC値はMICよりも有意に大きかった。これらの結果より、LICはLTを使用して正常に測定できたとしており、LTを使用することでLIC測定を簡単に実行できるようになり、LTはALS患者で呼吸療法を実行するための有用なデバイスである可能性が示唆された。

進行した球麻痺や気管切開している患者でも、LTの利用で肺や胸郭の柔軟性を評価可能

今回の研究結果により、研究グループは、ALS患者において、これまで呼吸障害を捉えることが困難だった、進行した球麻痺や気管切開している患者であってもLTを利用することで肺や胸郭の柔軟性を評価することができるようになったとしている。また、ALS患者において、MICよりLICを測定することのほうが肺や胸郭の柔軟性を維持拡大することの効果が大きいことも示唆しているという。

研究グループは、LICやMICを上手に測定できるALS患者とそうでない患者に分け、追跡調査を実施している。また、LTを使用したLVR練習により、肺合併症や生命予後などの改善にどの程度寄与しているかについても研究を進めているという。今後の展望として、「臨床利用を拡大するための啓発活動や患者さんにより優しく、有効性を確認できるLTの開発を行っていきたい」と、研究グループは述べている。

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