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急性心筋梗塞治療の予後、地域の人口密度と病院の診療実績が影響-横浜市大ほか

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2020年05月29日 PM12:00

2012~2015年発症の急性心筋梗塞患者6万4,414人を解析

横浜市立大学は5月27日、2012~2015年に発症した6万4,414人の急性心筋梗塞患者をデータベースに登録して解析した結果、日本でも低人口密度地域では急性心筋梗塞院内死亡率が高く、搬送距離に関わらず、緊急カテーテル治療実績件数の豊富な病院に搬送された場合には予後が良好であることが明らかになったと発表した。この研究は、同大附属市民総合医療センター心臓血管センターの松澤泰志講師、木村一雄教授らの研究グループによるもの。研究成果は、日本循環器学会の機関誌「Circulation Journal」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

急性心筋梗塞は、日本で死亡数の第2位を占める心臓疾患の中で、心不全とならび最も多い死亡原因とされている。急性心筋梗塞では、急性期治療の成否が予後に大きく関わり、早期の再灌流治療が非常に重要なため、病院までの搬送時間や病院内での救急医療体制が大きく影響する。欧米の報告から、搬送距離が長くなると急性心筋梗塞の死亡率が上昇することがわかっている。また、治療を受ける病院の規模が大きいと急性心筋梗塞の死亡率が低いことも報告されている。

海外では人口密度の低さとさまざまな疾患の予後不良との関係が多数報告されている。日本は世界の中でも人口密度の高い国の一つであり、搬送距離や病院の救急体制において他国とは状況が大きく異なる。そのような日本の状況において、人口密度と急性心筋梗塞死亡率との関係は不明であり、搬送距離や病院の規模との関係も不明であるため、今回研究グループはビッグデータを用いてこれらを検討した。

搬送距離にかかわらず、緊急カテーテル治療件数の多い病院への搬送で予後良好

横浜市立大学医学部循環器・腎臓・高血圧内科学教室は2020年4月に、日本循環器学会の実施する「循環器疾患診療実態調査(JROAD/JROAD-DPC)」のデータベースを用いて、人口密度が低い地域での入院は、心不全患者の院内死亡率が高いことを報告している。今回、研究グループは、JROAD-DPCデータベースに日本全国から6万4,414人の急性心筋梗塞患者をエントリーし院内死亡と人口密度、搬送距離、病院の循環器救急規模の関係を調べた。その結果、全体として低人口密度地域では急性心筋梗塞の院内死亡率が上昇した。しかし、緊急カテーテル治療の多い病院(ハイボリュームセンター)で治療された患者は、緊急カテーテル治療の少ない病院(ローボリュームセンター)で治療された患者と比較して、急性心筋梗塞死亡率が低く、ハイボリュームセンターに搬送されれば、人口密度が低い地域でも死亡率の上昇はみられなかったという。これらの結果から、搬送距離にかかわらず、緊急カテーテル治療件数の多い病院に搬送された場合には予後が良好だったということが明らかになった。

今回の研究成果により、日本でも人口密度や医療体制の地域格差に配慮した救急医療システムの整備が重要であることが明らかになった。国内では脳卒中・循環器病対策基本法が2019年12月1日に施行され、今後は専門医、かかりつけ医、学会、医師会、自治体、省庁が密接に連携して総合的な循環器病対策が推進されていく予定だ。研究グループは、地域での急性期循環器疾患診療体制の構築を進める上で有益な知見が今回の研究によって明らかになったとしている。また、今回の結果から、日本の現状において急性心筋梗塞の治療を集約化していくことが予後改善に寄与すると考えられる、と述べている。

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