日本のメディアの中には、誤った表記で報道されたケースも
今年の年末年始はいわゆる“日の良さ”の影響で9連休となる企業も多い。そこで、この連休を利用して海外旅行に行く人も多くなると思われる。政治面では課題が山積しているものの、そのアクセスの良さから、中国で新年を迎える人も多いだろう。
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中国への海外旅行の土産として、多くの旅行者が購入するのが「中国伝統薬」だ。大手ポータルサイトgooが調べた「中国土産といえば浮かぶものランキング」でも、中国茶に次いで、2位に「漢方薬」(この表記の是非については以下に記載)がランクインしている。
そうした現状に、昭和大学薬学部 教授(日本東洋医学会副会長)の鳥居塚和生先生は「全ての物が危険な物質を含んでいる訳ではないが、危険な物質を含んでいる可能性があること、また日本では販売が承認されていない薬を含んでいる可能性があることを改めて認識すべき」と警鐘を鳴らす。
英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)が、2013年に出したリリースがある。「一部の無認可の中国伝統薬の中に、鉛、水銀、砒素の危険な高レベル含有が判明」、そして「中国伝統薬に含まれる有毒物質を問題として来年から英国国内の販売を禁止」というものだ。
「これらが日本国内で報道される場合に、正確には『中国伝統薬(中薬)』とすべきところ、『漢方薬』という誤った表記による報道が見受けられました。日本独自の漢方医学と中医学は、明確に区別され定義されており、一般の方に心配をさせてしまう可能性があります」と鳥居塚先生は語る。
「天然」「自然」由来だからと安易に信じないことが重要
注意が必要なのは中国伝統薬だけではない。「たとえサプリメントでも安易に海外で購入するのは危険」と鳥居塚先生。「天然由来だから安心、ということを謳ったサプリメント等も数多く販売されているが、天然由来の有毒なものもあるほか、少量では問題なくても、多量や長期にわたる服用で、未知の被害が顕在化するケースもあります」
こうしたサプリメント等の商品の中には、即効性を狙って強い作用を持つ化学成分を添加するものも。輸入品や個人輸入で買えるものの中には、健康を脅かす危険性のあるものも含まれていることがあるということを念頭においておく必要がある、と強調する。
中国伝統薬と漢方薬の違いについて正しい認識、そして患者に対する指導を
「日本の医療機関で処方されたり、薬局で購入した“漢方薬”や“漢方エキス製剤”は、日本で認められているものです。これらを服用されている患者さんが、このような報道を受けて誤解されることがあるかもしれません。そして、ご自身が服用されている薬が心配になり、自己判断で服用を中止してしまうということも懸念されます。このような表現による誤解は、きちんと説明してあげれば安心することと思います」と述べている。また一方では、「個人で輸入したり、海外で入手したものの中には、健康を脅かす危険性のあるものが含まれている可能性があることがあります。これらの点を患者さんに対して説明し、安易に、手を出さないことを指導すべきです」とも述べている。(鳥居塚先生)
それでも患者が服用し、体調不良を訴えた際には、
(1)何を、いつ、どのくらい服用したか
(2)現物を持参
の2点をすぐに主治医や薬剤師に伝えるよう、患者に念押しする必要があるだろう。(QLifePro編集部)