売上高を見ると、武田はシャイアーが通年で連結対象に加わったことで3兆円を突破。特に米国で大きく売上を伸ばし、日本でも増収を確保した。海外売上比率は8割を超えた。
主力の潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」は約3割増の3472億円に成長し、今期は4300億円まで伸長する見込み。癌領域では「ニンラーロ」「アドセトリス」と二桁成長の製品が目立ち、シャイアー製品である血漿分画製剤由来の免疫疾患領域や希少疾患の治療薬も牽引した。6製品が売上1000億円を超えた。
第一三共も、抗凝固剤「エドキサバン(一般名)」が31%増の1540億円と大型製品に成長し、6%の増収となった。同社が期待する抗体薬物複合体の抗癌剤「エンハーツ」は140億円を計上した。
ピーク時に3000億円を売り上げた降圧剤「オルメサルタン(一般名)」の特許切れ対応が事業課題となっていたが、エドキサバンの成長で売上収益は16年3月期の水準にほぼ回復した。国内は2%の増収を確保した。
エーザイは、国内で売上を落としたものの、米国で30%増、中国で16%増と海外の好調に支えられ、8%の増収となった。米メルク関連収入として、一時金やマイルストンなど761億円を計上したことも寄与した。
主力の抗癌剤「レンビマ」は全地域で売上を伸ばし、約8割増の1119億円と自社抗癌剤では初のブロックバスター製品となった。抗てんかん薬「フィコンパ」も約3割増と拡大した。
アステラス製薬は減収予想から転じて横ばい、為替の影響を除くと増収となった。海外売上比率は7割を超えた。
後発品が参入した過活動膀胱治療剤「ベシケア」が53%減と大幅に落ち込んだが、抗癌剤「エンザルタミド(一般名)」が早期ステージの前立腺癌で浸透し、当初予想を大幅に上回る20%増の4000億円と貢献した。過活動膀胱治療剤のミラベグロン製剤は二桁近い伸びを示し、免疫抑制剤「プログラフ」も微減にとどめた。
利益面では、武田は財務ベースで営業利益が58%減、当期利益が67%減となったものの、シャイアー統合によるコスト削減効果でコアベースでは約2倍の営業利益となり、赤字予想の最終利益も黒字に転じた。
第一三共は各利益で二桁増益、エーザイは営業、当期利益で過去最高益を達成し、最終利益はほぼ2倍に拡大した。
アステラスは営業利益が横ばい、法人所得税費用の増加で二桁の最終減益となったが、為替影響を除けば営業増益となった。
21年3月期は、武田は買収関連費用の影響が減少することで売上高横ばい、営業利益は3.5倍を見込むなど、大幅増益を計画する。エーザイは引き続きグローバル製品は成長するものの、研究開発費の増加で増収減益を予想。アステラスは減収増益を計画するものの、実質ベースでは減益となる見通し。
一方、第一三共は、認知症進行抑制剤「メマリー」の独占販売期間が満了し、エンハーツの販管費の増加が想定されるため、減収大幅減益を予想する。