既存のヒト汗腺筋上皮細胞はその性質を長期的に維持できず
大阪大学は5月8日、ヒト汗腺筋上皮細胞の不死化による、長期培養可能な細胞株「iEM cell」の樹立に成功したと発表した。これは、同大大学院薬学研究科先端化粧品科学(マンダム)共同研究講座の岡田文裕招へい教授、同蛋白質研究所寄附研究部門の関口清俊教授らの研究グループによるものだ。
画像はリリースより
日常生活における多汗や汗臭を解決することは、生活のクオリティの向上につながる。発汗機能を制御するには、汗腺を構成する細胞の性質を理解し、汗腺機能を調節する必要がある。ヒト汗腺を構成する細胞のうち、筋上皮細胞は汗腺を収縮させ汗を体外へ押し出す機能と、幹細胞として汗腺組織の恒常性を維持する機能を持つ。そのため筋上皮細胞の活動がヒトにおける発汗において重要である。ヒト汗腺筋上皮細胞の機能を解明する上で、培養細胞は有用な手段だが、これまでヒト汗腺筋上皮細胞は3代程度しか継代培養ができず、筋上皮細胞の性質を保持していなかった。
培養下のヒト汗腺筋上皮細胞に不死化遺伝子導入で、「iEM cell」開発に成功
研究グループはこれまでに、ヒト汗腺筋上皮細胞を生体内に近い状態で培養することにより、筋上皮細胞の性質を短期的に維持する方法を確立してきた。今回、この培養下のヒト汗腺筋上皮細胞に、不死化遺伝子を導入することで、長期的に筋上皮細胞の性質を維持できる不死化ヒト汗腺筋上皮細胞「iEM cell」(immortalized human Eccrine sweat gland Myoepithelial Cell)の樹立に成功した。この細胞株は10代以上の継代培養が可能で、ヒト筋上皮細胞の機能を支える特有の遺伝子「α-Smooth muscle actin」を発現しており、ヒト筋上皮細胞の性質を維持していた。
「今後、ヒト汗腺筋上皮細胞の研究が進むことで、汗腺を構成する細胞の活動制御による、汗腺の発汗機能を根本的に抑制する次世代の制汗剤の開発や、汗腺機能を回復させ、熱中症などの発汗機能障害を改善できる治療法の開発、さらに、汗腺の再生技術にもつながる可能性がある」と、研究グループは述べている。
なお、このiEM cellおよびその製造法は、特許登録されている。
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