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新型コロナウイルス感染症、PCR検査陽性率と死亡者数は相関-千葉大

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2020年04月22日 PM12:30

感染の広がり方、西洋とアジア地域では100倍程度の著しい地域差

千葉大学は4月21日、新型コロナウイルス感染症について、PCR検査陽性率と死亡者数との相関関係があること、また、1日の死亡数は、西洋諸国で陽性率7%未満の国において、陽性率がそれ以上の国の15%でしかないという解析結果を発表した。これは、同大大学院薬学研究院および医学研究院の研究グループによるもの。研究成果は、「Preprints」(査読前論文公開サイト)に掲載されている。


画像はリリースより

新型コロナウイルス感染症が世界的に猛威をふるっている現在、自国の対応に精一杯で、他国との客観的な比較が十分ではない。そこで、研究グループは入手可能な世界の情報を科学的に解析することで、感染症終息のための新たな戦略が見い出せることを期待し、調査を開始した。新型コロナ感染症の世界各国における検査陽性者および死亡者数は、欧州疾病予防管理センター(ECDC)から、現在のPCR検査の実施状況は、英語版のWikipedia( testing)より入手した。機械学習はPython(3.7.3)のscikit-learnライブラリ(0.22.2)を用いて実施した。

世界の感染拡大は、各国のPCR検査陽性者数の増加で報告されている。PCR検査は、リスクの低い人に対し大量に実施しても誤って陽性となる数が多くなるので、検査の意味がなくなる。必要な検査数を保つことが重要で、陽性率はその指標になる。新型コロナウイルス感染症では無症状感染者が多くいることから、報告の数字は各国の検査の徹底度に影響されており、感染者数を正確には表していないと考えられる。そこで、1日の死亡者数をその国の人口で補正したデータを、その変化のパターンから地域ごとの予測を可能とする機械学習で解析した。

その結果、人口1億人あたりの1日の死亡者数は、世界の多くの国で感染拡大30日後にほぼ一定となり、その推定値(中央値)は、西洋諸国(欧州、北米、オセアニアを含む)で1,180人であるのに対し、中東で128人、ラテンアメリカでは97人、(中東を除く)では7人であった。このように死亡者数から解析すると新型コロナウイルス感染症の広がり方には、西洋とアジア地域では100倍程度の著しい地域差が確認された。

地域差の原因は、国の政策、高齢化の程度、BCGワクチン接種を含む厚生制度、医療環境、そして国民性などによる影響が考えられるが、民族の遺伝的要因(遺伝子配列の違い)による可能性もある。ウイルスの細胞への侵入に関わるタンパク質や、ウイルスから体を守るタンパク質の遺伝子の民族による違いなどが考えられるが、新型コロナとの関連については、今後の研究する必要がある。

7%未満の陽性率を保つことが死亡者数の抑制に重要

また、研究グループは、条件のよく揃っている西洋諸国について、感染による死亡者数とPCR検査の状況を比較した。人口で補正した死亡者数とPCR検査数の間に関係は認められなかったが、その陽性率との間には明確な相関が見られた。機械学習の解析によると、陽性率が7%未満の国の死亡者数は、陽性率がそれ以上の国の15%に過ぎないことが明らかになった。陽性率が7.0〜16.9%の国と17.0〜28.0%の国の間には推定死亡者数に差はなく、7%未満の陽性率を保つことが、死亡者数の抑制に重要と考えられる。

どこの国でも、PCR検査陽性者が増加して数日経過してから、死亡者の増加が始まる。この2つの増加の間の期間は国によって1〜25日間の違いがある。研究グループは解析によって、この死亡者数の増加がみられるまでの期間とPCR検査の陽性率が反比例することを見出した(逆相関、p < 0.01)。つまり、陽性者が見出されて直ちに死亡者が増加した(この期間の短い)国は、PCR検査が不十分で症状が出る前の早期感染者を見落としていた、あるいは重症者の入院が手遅れになった可能性が高いと考えられる。この結果からも、PCR 検査の陽性率は死亡者数変動の指標となることが明らかになった。

アジアの国々でも陽性率が7%以上の多くの国では感染者の増加が続いている。日本の陽性率は4月10日現在7.8%で上昇傾向にあり、死亡者数を増加させないために陽性率を低下させるようにPCR検査能力を拡大することが急務と考えられる。「この研究は世界で初めて新型コロナウイルス感染症でのPCR検査陽性率と死亡者数との相関を見出したもの。死亡者を増やさないためには、PCR検査を充実させることが必要である。しかし、医療従事者の負担を今以上に増やすことは無理であることをよく理解している。適切であれば医療関係者や研究者等を総動員してでも前向きに社会全体でPCR検査拡大を強くサポートする必要性を提案する」と、研究グループは述べている。

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