2015~2016年にベトナムで新たに出現した新興エンテロウイルス
金沢大学は4月15日、2015~2016年にベトナムの手足口病小児から新興エンテロウイルスA71 C4亜型およびこの組替え型ウイルスを特定するとともに、新興エンテロウイルスA71 C4亜型が従来のB5亜型よりも病原性が強いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医薬保健研究域医学系の市村宏教授らと、東京都医学総合研究所およびベトナム国立小児病院の研究グループによるもの。研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
手足口病は、エンテロウイルスが原因となって手のひらや足の裏、口内に水泡性の発疹が出る急性発熱性ウイルス感染症。5歳以下の乳幼児・小児によくみられる。通常は軽い症状のみであり、ほとんどが数日のうちに軽快する。しかし、エンテロウイルスA71を原因として発症するケースでは、時として重症化することがあり、特に東・東南アジアにおいて大きな問題になっている。
これまでに、手足口病の原因ウイルスとして22血清型のエンテロウイルスが同定されている。中でも、代表的な手足口病の原因ウイルスは、エンテロウイルスA71、コクサッキーウイルスA16、コクサッキーウイルスA6だ。エンテロウイルスA71には、A~Hの8つの遺伝子型があり、このうちB・C型にはそれぞれ1~5の遺伝子亜型がある。手足口病流行の中心となる遺伝子型および亜型は、年によって異なる。
従来のB5亜型よりも病原性が強い
今回の研究では、2015~2016年にベトナムにおいて手足口病を発症した小児488名を対象とした調査を実施。流行の原因ウイルスを明らかにし、その中で新興エンテロウイルスA71 C4亜型を特定することに成功した。この新興エンテロウイルスA71 C4亜型は、これまでに見られなかった新たな群を形成していたという。
また、新興エンテロウイルスA71 C4亜型とコクサッキーウイルスA8による組み換え型エンテロウイルスを2株同定。新興エンテロウイルスA71 C4亜型での重症化率はB5亜型よりも高く、トランスジェニックマウスを利用した病原性解析でも、新興エンテロウイルスA71 C4亜型感染によるマウスの致死率が高いことがわかり、新興エンテロウイルスA71 C4亜型は従来のB5亜型よりも病原性が強いことが明らかになった。
同研究における新興エンテロウイルス株および組み換え型ウイルスの同定は、手足口病流行の一事例についての発見にとどまらず、エンテロウイルスの病原性解明やワクチン開発という観点から、さらに幅広いケースに活用される重要な成果だという。研究グループは、今後もベトナムでのエンテロウイルス流行状況を継時的に調査し、トランスジェニックマウスモデルを利用してエンテロウイルスA71の病原性や手足口病重症化の病態解明などについて研究を進めることで、手足口病のより包括的な予防・対策アプローチにつながることが期待される、と述べている。
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・金沢大学 プレスリリース