2020年度から後期高齢者健診に、フレイル評価導入
東京都健康長寿医療センター研究所は3月25日、フレイルとその予備群が地域在住の高齢者の要介護発生や死亡に大きく寄与していることを明らかにしたと発表した。これは、同研究所の北村明彦研究部長、新開省二副所長らの研究グループによるもの。研究成果は、「日本公衆衛生雑誌」に掲載されている。
画像はリリースより
日本では、健康寿命の延伸を目標として、「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」が施行されつつある。その一環として、2020年度より、後期高齢者に対する健診の質問票に「フレイル」を評価する項目が導入される。しかし、健診でフレイルを評価し、その改善や予防を図ることによって、その後の要介護や死亡がどの程度抑制できるのかについては明らかになっていない。
研究グループは、フレイルおよび他の危険因子が要介護発生、死亡のリスク上昇に及ぼす影響を検討するため、群馬県の一地域の高齢健診受診者約1,200人について、平均8年(最大13年)追跡調査した。フレイルは、以下5項目のうち、3項目以上該当をフレイル、1~2項目該当をフレイル予備群と判定した。
1)意図しない体重減少(半年以内に2~3kg)、2)「自分が活気にあふれている」の質問に「いいえ」と回答、3)外出が1日平均1回未満、4)歩行速度が毎秒1m未満、5)握力が男性26kg未満、女性18kg未満
フレイル、フレイル予備群、認知機能低下、脳卒中既往で要介護発生のハザード比が高値
その結果、要介護発生のハザード比は、フレイル、フレイル予備群、認知機能低下、脳卒中既往で1.4~2.1倍と有意に高値を示した。一方、要介護発生の集団寄与危険度割合(その因子を取り除くことにより集団全体の要介護発生が何割減少するのかを表す指標)は、フレイル予備群が17%、フレイルが12%と、他の因子に比べ断然高率であった。死亡についても同様であり、フレイル予備群が24%、フレイルが13%の寄与危険度割合を示した。これらの結果は、フレイルおよびフレイル予備群に陥ることを防ぐことにより、約8年後までの要介護発生を約3割、死亡を約4割、それぞれ減らすことが可能となることが示唆するものだ。さらに、年齢別に解析した結果から、前期高齢期の方が後期高齢期よりも要介護発生や死亡に対するフレイルの影響度が大きいことが明らかになった。
今回の研究成果の意義は、高齢者健診の受診者を対象とした場合、自立喪失(要介護や死亡)に最も寄与していた要因はフレイル及びフレイル予備群であることを示した点にある。「フレイルを健診にて評価し、フレイルやフレイル予備群と判定された人に対して、フレイル状態の改善、および要介護化の予防のためのさまざまな働きかけを行うことは、高齢者の健康余命延伸に多いに貢献するものと考えられる。また、そうした取り組みは前期高齢期から開始した方がより効果的であると思われる」と、研究グループは述べている。
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・東京都健康長寿医療センター研究所 プレスリリース