後期高齢者の血圧症、糖尿病、脂質異常症の服薬率などを調査
東京都健康長寿医療センター研究所は3月5日、後期高齢者約80万人分のレセプトと定期健康診査(健診)の分析結果を発表した。これは、同研究所の石崎達郎研究部長、光武誠吾研究員らの研究グループが東京大学大学院医学系研究科らと共同で行った研究によるもの。研究成果は、国際科学雑誌「Preventive Medicine Reports」に掲載されている。
後期高齢者健診の受診者には、すでに生活習慣病の治療中の人が少なからず含まれている可能性があったが、その実態は明らかではなかった。そこで研究グループは、2013年9月~2014年8月までの東京都在住の後期高齢者のレセプトと健診結果について分析し、健診受診者の、高血圧症、糖尿病、脂質異常症の服薬率や、管理目標値にされている血圧、血糖値、LDLコレステロール値の実態を調査した。
健診受診者27万人のうち、45%が服薬治療中、90歳以上では厳しい血圧管理目標値も
分析の結果、後期高齢者健診を受診した約27万人のうち、すでに高血圧症、糖尿病、脂質異常症の服薬治療中だった人は45%であった。これは、健診を受けていない人の服薬治療割合(37%)を上回っていた。この結果は、服薬治療中の人を対象としない「特定健診(メタボ健診)」に準じた従来の健診では、有意義な保健事業にならないのではないかという課題を提示している。
また、高血圧症や糖尿病の診療ガイドラインによると、高齢者で心身機能が衰えている場合、疾患管理の基準となる血圧や血糖値は緩い基準で管理することが推奨されている。しかし、90歳以上の高齢者や在宅医療患者は、血圧は収縮期血圧110mmHg未満等に、血糖値はヘモグロビンA1c6.0%未満に、LDLコレステロール値100mg/dl未満等にと、より厳しい数値目標で管理されていた。さらに90歳以上で、糖尿病薬服薬中の約3割が、へモグロビンA1c6.0%未満という低い数値で管理されていることも判明。糖尿病患者で生じやすい低血糖発作の発生リスクは高齢になるほど増えると報告されている。今後は、後期高齢者における低血糖発作の実態や予防について、血糖値の管理目標も含めて検討していくことが必要だ。
厚生労働省は、2020年度から高齢者の特性に合わせた保健事業を提供するため、これまでの後期高齢者の健診(血液検査等)に、日常生活を脅かす「フレイル」などの早期発見を目指した質問項目を加えることを発表している。研究グループは、「今後も、本研究のようにレセプト情報と健診情報を連結したデータを用いて、健診の意義を検討していく必要がある」と、述べている。
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・東京都健康長寿医療センター研究所 プレスリリース