オメガ3脂肪酸が豊富な「アマニ油」を母マウスが摂取
医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)は2月13日、オメガ3脂肪酸が豊富なアマニ油を母マウスが摂取した際に、仔マウスのアレルギー性皮膚炎が抑制されるメカニズムを解明したと発表した。この研究は、同研究所ワクチン・アジュバント研究センターの國澤純センター長、平田宗一郎研究員、長竹貴広主任研究員らと、京都大学、理化学研究所、NTT東日本関東病院、東京大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Allergy」に掲載されている。
近年、アレルギー・炎症性疾患の患者数が増加傾向にあり、その要因として食事などの生活習慣と、それに伴う腸内環境の変化が注目されている。特に、乳幼児期に発症するアレルギーにおいて、妊娠・授乳期の食生活や母乳に含まれる成分の関与についてさまざまな指摘や推測がされてきた。これまでに、母親の食事や母乳の中のオメガ3脂肪酸が多いと乳幼児期のアレルギーの発症率が低いことが、コホート研究により報告されている。しかし、母乳中のオメガ3脂肪酸が乳幼児アレルギーの発症を抑えるメカニズムは、明らかになっていない。
画像はリリースより
母乳中にオメガ3DPAの14-ヒドロキシ化代謝物が増加し、抗アレルギー効果
研究グループは、オメガ3脂肪酸の一つであるαリノレン酸を多く含むアマニ油を妊娠・授乳期に摂取することで、生まれてくる仔マウスのアレルギーの発症を抑制できることを見出した。母乳を作る場となる乳腺には、他の臓器と異なる脂質代謝ネットワークが存在。アマニ油を摂取することで、母乳中にオメガ3DPAの14-ヒドロキシ化代謝物が増加し、抗アレルギー効果を示すことがわかったという。
母乳を介して仔マウスに移行したオメガ3DPAの14-ヒドロキシ化代謝物は、樹状細胞に働きかけ、免疫反応を抑制する作用を有する分子「TRAIL」の発現を誘導。これにより、T細胞からの炎症性サイトカイン産生を抑制し、その結果、アレルギー性皮膚炎を抑制することが明らかになった。
今回、マウスにおける効果が証明されたが、今後、ヒトでも同様の効果があるか確認することが必要だ。将来的にはオメガ3DPAの14-ヒドロキシ化代謝物を用いたアレルギー・炎症性疾患に対する新たな予防・改善・治療法の開発が期待される、と研究グループは述べている。