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高齢運転者の認知機能検査導入後、高齢交通弱者の死傷が増加したことが判明-筑波大

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2020年02月03日 AM11:15

認知機能検査導入後も、75歳以上の運転事故率は減少せず

筑波大学は1月29日、認知機能検査導入後、75歳以上の交通弱者の中で、死傷が増えた性・年齢層があることがわかったと発表した。これは、同大医学医療系の市川政雄教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Accident Analysis & Prevention」にオンライン掲載されている。

高齢化が著しい日本では、全年齢の交通死傷数に占める75歳以上の割合が増加し続けており、2018年には6.3%となった。また、アクセルとブレーキの踏み間違いや高速道路の逆走など、高齢運転者のミスによる事故も、社会的に注目されている。これらを減らすため、2007年に道路交通法が改正され、2009年6月から75歳以上の運転者が運転免許を更新する場合、認知機能検査を受けることが義務付けられた。

これは、検査で認知機能が低下していると判定された運転者が特定の交通違反をしていた場合、もしくは、免許更新後に特定の交通違反をした場合は、臨時適性検査(認知症の専門医の診察)を行い、認知症と診断されると免許が停止または取り消しとなるもの。2017年3月からはさらに、検査で認知機能低下の恐れがあると判定された75歳以上の運転者は、交通違反の有無に関わらず、免許を更新する前に臨時適性検査を受ける、もしくは医師の診断書を提出することが義務付けられ、認知症と診断されると免許が停止または取り消しと、より厳しくなった。

運転免許更新時の認知機能検査は、デンマーク、カナダ・オンタリオ州、台湾でも行われている。このうちデンマークではすでに検査の効果検証が行われているが、「検査導入によって高齢運転者の事故は減少せず、高齢者の自転車や歩行者としての死傷を増やした可能性」が示唆された。研究グループは、2009年の認知機能検査導入後、75歳以上の免許保有者数あたりの原付以上運転中の事故率がどの程度変化したかを統計的に分析した結果、70~74歳の事故率と比べて減少していないことを明らかにしている。今回さらに、高齢交通弱者(自転車や歩行者として)の死傷についての分析を行った。

認知機能検査導入後に運転を止めたり控えたりしたことで、交通弱者に転じ、事故につながった可能性

研究では、公益財団法人交通事故総合分析センターから得た、2005年1月~2016年12月の、月ごとの全国の交通事故・外傷データを分析した。このデータは、当事者の性・年齢層(70~74歳、75~79歳、80~84歳、85歳以上)・交通手段(原付以上運転中、自転車、徒歩)および重傷度(死亡、重傷、軽傷、無傷)で層別し、事故数を集計したもの。75歳以上の運転者が免許更新時の認知機能検査の対象であるため、75歳以上の人口当たりの交通弱者(自転車や歩行者として)の死傷率が、70~74歳における死傷率を統計的に調整した上で、認知機能検査が導入された2009年6月以降にどの程度変化したか、分断時系列解析を用いて分析した。

その結果、認知機能検査導入後、75歳以上における人口当たりの交通弱者の死傷率は、70~74歳における率と比べ、75~79歳と80~84歳の女性で増加していた(2009年6月~2012年5月の3年間で、それぞれ7.5%と9.3%増加)。また、認知機能検査が導入されてから3年間が経過した2012年6月以降(75歳以上の免許有効期間は3年間なので、この時までに、検査対象の高齢運転者は全員が認知機能検査を受けたか、さもなければ免許を更新しなかった)、80~84歳と85歳以上の男性と85歳以上の女性でも増加していた。

今回の研究により、2009年に導入された認知機能検査は、高齢運転者の事故を減らすという当初の目的を達成していない一方で、高齢交通弱者の交通死傷を増やすという意図せぬ副作用をもたらしたことがわかった。この背景には、高齢運転者が認知機能検査導入後に運転を止めたり控えたりしたことで、交通弱者に転じたことがあると考えられる。研究グループは、「本研究成果は、日本のみならず、高齢者の安全な交通手段の確保を進めている他国の交通政策にも参考になると考えられる」と、述べている。

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