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サルファ剤による重症薬疹が特定のHLA型と関連することを発見-理研ほか

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2020年01月31日 AM11:00

現状では予測できないため「薬疹が出現したら中止」の対応

(理研)は1月28日、サルファ剤の服用によって生じる重症薬疹が、特定のHLA型である「-A*11:01」と関連することを発見したと発表した。この研究は、理研生命医科学研究センターファーマコゲノミクス研究チームの莚田泰誠チームリーダー、国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部の斎藤嘉朗部長、厚生労働省難治性疾患政策研究事業 重症多形滲出性紅斑に関する調査研究班(研究代表者:島根大学医学部 森田栄伸教授)などの共同研究グループによるもの。研究成果は、米国の科学雑誌「Journal of Investigative Dermatology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

スルファメトキサゾールとサラゾスルファピリジンは、共通の化学構造(スルホンアミド)を持つサルファ剤であり、前者は抗菌薬として、後者はリウマチ治療薬として広く使用されている。しかし、服用した患者の一部に薬疹が起こることが、治療上、大きな問題になっていた。サルファ剤による薬疹が起こりやすい患者を事前に予測する方法は、これまでなかったため、医療現場では、服用後に薬疹が出現した場合は、直ちにサルファ剤を中止するなどの対応がとられている。しかし、一部の患者では薬疹が重症化し、皮膚粘膜眼症候群(、SJS)、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、(DIHS)を来し、死亡したり、重篤な後遺症が残ったりすることがある。厚生労働省に報告された医薬品の副作用を集計した報告では、SJSまたはTENは年間に平均して602例発症し、そのうち、8.7%(52.4例/年)が死亡、5.3%(31.6例/年)が後遺症ありまたは未回復だった。また、スルファメトキサゾールおよびサラゾスルファピリジンによるSJSまたはTENの年間発症数は、それぞれ1~10例および3~12例だった。

サルファ剤の服用による重症薬疹患者におけるHLA-A*11:01の保有率は67%

今回、共同研究グループは、・トリメトプリム配合剤またはサラゾスルファピリジン)の服用者に生じた重症薬疹患者15例のHLA遺伝子を解析し、日本人集団2,878例のデータと比較した。重症薬疹患者15例の内訳はSJSが7例、TENが1例、DIHSが7例であり、服用していたサルファ剤の内訳はスルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤が6例、サラゾスルファピリジンが9例だった。

解析の結果、SJSまたはTENの患者8例のうち6例(75%)、DIHS患者7例のうち4例(57%)が「」というHLA型を保有していることが判明。全ての重症薬疹患者におけるHLA-A*11:01の保有率は67%であり、日本人集団における保有率17%と比較して、統計的に有意に高頻度だった(P値=0.000214)。また、ある事象(副作用など)の起こりやすさの比較尺度であるオッズ比は、9.84と非常に高い値を示した。これにより、HLA-A*11:01はサルファ剤による重症薬疹の発症に密接に関連することが明らかになった。

発症リスク予測バイオマーカーとしての活用に期待

近年、コンピュータを用いたHLA分子と医薬品分子のドッキング・シミュレーションにより、薬疹の原因になる医薬品の特定のHLA型への結合親和性を予測することが可能になりつつある。そこで、スルファメトキサゾールとサラゾスルファピリジンのHLA-A*11:01との相互作用を解析したところ、いずれもHLA-A*11:01に強く結合することが推定された。HLA分子への結合親和性の指標である50%阻害濃度(IC50値)は、それぞれ78μM、および13μMと計算され、臨床用量のスルファメトキサゾールおよびサラゾスルファピリジンを服用した場合の最高血中濃度(それぞれ229μMおよび16μM)と同程度であったことより、両薬物とHLA-A*11:01は直接的に相互作用しうると考えられる。

今回の研究結果から、HLA-A*11:01を保有する人は、保有しない人に比べてサルファ剤の服用時に重症薬疹を発症するリスクが高いことが示唆された。研究グループは、「本研究で同定したHLA-A*11:01は、サルファ剤による治療における重症薬疹の発症リスクを予測するバイオマーカーとして、将来的には発症予防法の確立に活用されることが期待できる」と、述べている。

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