肥満・糖尿病とアルツハイマー病の合併は寿命にどう影響するか?
国立長寿医療研究センターは12月25日、マウスモデルを用いて、アルツハイマー病の原因とされているβアミロイドが肥満・糖尿病マウスの寿命をさらに短くさせることを証明し、さらにそのメカニズムとしてアストロサイト(星状膠細胞)の活性化の関与を示唆する結果を得たと発表した。この研究は、同センター認知症先進医療開発センター分子基盤研究部の篠原充室長と里直行部長の研究グループが、大阪大学および理化学研究所との共同研究として行ったもの。研究成果は、「The FASEB Journal」に掲載されている。
画像はリリースより
肥満や糖尿病はアルツハイマー病のリスク因子であり、アルツハイマー病は糖尿病を悪化させることがこれまでの研究で示されている。また、それぞれが寿命を短くすることはよく知られた事実だ。一方で、それらを合併した時、寿命がどうなるかについてはほとんど注目されてこなかった。
肥満・糖尿病×アルツハイマー病マウスの寿命短縮、GFAP増加が関与か
今回、研究グループは、肥満・糖尿病とアルツハイマー病の両方を持つマウスを作製し、アルツハイマー病の原因物質であるβアミロイドが肥満・糖尿病マウスにおいて寿命をさらに短くすることを証明し、さらにそのメカニズムの詳細について解析を行った。
脳には神経細胞のほかに、ミクログリアやアストロサイトなどの細胞が存在する。ミクログリアは貪食作用を持った細胞で脳内の不要物を掃除する。アストロサイトは神経細胞と協調しながら脳機能に関わり、血管の細胞と一緒に血液脳関門を形成する。
解析の結果、肥満・糖尿病マウスではこのミクログリアの機能が低下していることが示唆された。また、肥満・糖尿病マウスの脳内にβアミロイドが加わると、アストロサイトを構成する細胞骨格のひとつGFAPが増加しており、アストロサイトが反応性に活性化されることが示唆された。GFAPはGlial Fibrillary acidic protein(グリア線維性酸性タンパク質)の略でアストロサイトの細胞内に存在し、直径10nm程度の管腔構造を持つ細胞を支える支柱の構成成分。GFAPは以前から、加齢により増加することが知られていた。
加齢により増加する GFAP が「糖尿病とアルツハイマー病の合併」で増加することは興味深い結果と考えられる。研究グループは、「今後は糖尿病とアルツハイマー病の合併で活性化されるアストロサイトの機能を探ることで健康寿命の延伸につながる可能性があると考えられる」と、述べている。
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