高齢糖尿病患者1,163人を約6年追跡したJEDIT研究をもとに解析
東京都健康長寿医療センターは11月25日、高齢者糖尿病における理想的な摂取エネルギー量(カロリー)を、J-EDIT研究のデータをもとに解析し、その結果を発表した。この研究は、同センター糖尿病・代謝・内分泌内科の大村卓也(現・研究所研究員)氏、荒木厚副院長らの研究グループによるもの。研究成果は、日本老年医学会の英文誌「Geriatrics & Gerontology International」に掲載される。
画像はリリースより
日本ではこれまで、標準体重(身長の2乗に22をかけた体重)と身体活動量にもとづいて1日の摂取エネルギー量の目安を算出していた。加齢とともにサルコペニア・フレイルなどが増加するが、低栄養はこれらの病態を悪化させ得ることから、高齢者の糖尿病の食事療法は、単に制限するだけではなく、フレイルの対策のために「不足なく取る」という考え方が出てきた。
そこで研究グループは、高齢糖尿病患者における望ましい摂取エネルギーの量を明らかにするため、高齢糖尿病患者1,163人を約6年間追跡したJEDIT研究のデータを用いて、体重あたりのエネルギー摂取量と死亡リスクとの関係について検討を行った。
まず、摂取エネルギー量を小さい方から大きい方に4群に分け、各群の死亡リスクを計算した。その結果、摂取エネルギー量が多すぎても少なすぎても死亡リスクが高くなることが判明。特に、肥満を伴う人でエネルギー量が不足していると、死亡リスクが高いことも明らかになった。
高齢者ではエネルギー量が不足するとフレイルや低栄養をきたして死亡しやすくなる可能性
これらの結果から、身長の2乗に22を掛けて求めた標準体重をもとに摂取エネルギー量を算出すると、高齢者ではエネルギー量が不足する懸念があり、患者の年齢を考慮した目標体重の方が、過不足なくエネルギー量を設定できると考えられた。
今回の研究成果は、「糖尿病診療ガイドライン 2019」にある「高齢者の目標体重は身長の2乗に22~25を掛けて柔軟に設定する」という推奨を支持するもので、高齢者糖尿病の食事療法は、単に制限するだけではなく、「過不足なく取る」ということが大切であることがわかった。研究グループは、「おそらく、高齢者ではエネルギー量が不足するとフレイルや低栄養をきたして死亡しやすくなるのではないかと考えている。実際、自分がどれくらいのエネルギー量を摂取しているかは把握が難しいので、外来で医師や栄養士に相談することが大切だ」と、述べている。
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・東京都健康長寿医療センター プレスリリース