東京薬科大学の深見希代子教授らの研究グループは、乾癬様皮膚炎の発症に、皮膚の脂質代謝酵素が関与することを、マウスを用いた実験で発見し、2012年 7月17日(英国時間)に英国オンライン科学雑誌「Nature Communications」で公開されました。
この研究成果は、乾癬に対して皮膚の脂質代謝が治療のターゲットになるという新たな視点を提供するもので、新たな治療薬の開発につながる発見につながったと言えます。
研究では、脂質代謝酵素の一つである「ホスホリパーゼ Cδ1(PLCδ1)」が、皮膚で欠損した遺伝子改変マウスを製作。そのマウスの皮膚では、ヒトの乾癬患者皮膚の特徴でもある「IL-17」 の過剰産生を伴う炎症が見られ、実際にヒト乾癬患者皮膚においても 「PLCδ1」が減少していることが確認されました。
また、リンパ球からの 「IL-17」 産生を促進する働きを持つ「IL-23」の増加もマウスの皮膚では見られ、「IL-23」の働きを阻害したところ、「IL-17」 の産生量が正常化することも確認できました。
さらに、皮膚で過剰に産生された「IL-17」は、血液中にも放出され、白血球の一種である顆粒球の産生を骨髄において促進することが分かりました。
この顆粒球の増加は、脾臓や血液中でも見られたことから、表皮細胞における脂質代謝異常は、全身性の炎症の一因になっているとも言えます。
「IL-17」の過剰産生は、関節リウマチや多発性硬化症などの自己免疫疾患の発症にも関わっていると考えられていることから、研究グループでは、皮膚の脂質代謝異常がこれらの疾患の発症に関与している可能性もあるのではないか、としています。
▼外部リンク
東京薬科大学 プレスリリース
http://www.toyaku.ac.jp/PDF/
東京薬科大学
http://www.toyaku.ac.jp/
Nature Communications
http://www.nature.com/ncomms/journal/