神経筋接合部の形成不全を呈するDOK7型筋無力症を発見
東京大学医科学研究所は9月19日、DOK7遺伝子を用いた疾患の遺伝子治療または予防に関する特許(日米欧)の独占ライセンス契約を、当該遺伝子治療の開発のために設立されたAmplo Biotechnology社と締結したことを発表した。この契約締結は、同大学大学医科学研究所腫瘍抑制分野の山梨裕司教授らの研究に基づくもの。
人間の運動機能には、運動神経を介した骨格筋収縮の緻密な制御が必要だ。神経筋接合部は運動神経と骨格筋を結ぶ唯一の連結装置であり、その喪失は呼吸を含めた運動機能の喪失を意味する。これまでに、研究グループは、神経筋接合部の形成に必須のタンパク質「Dok-7」を発見。また、そのヒト遺伝子(DOK7)の異常による劣性遺伝病として神経筋接合部の形成不全を呈するDOK7型筋無力症を発見していた。
DOK7型筋無力症の運動機能改善、生存期間延長をマウスで確認
研究グループは、マウスを用いた実験から、DOK7発現ベクターの投与により神経筋接合部を後天的に拡張できることを実証し、DOK7型筋無力症を発症した疾患モデルマウスへの投与により運動機能の改善、生存期間の延長を確認していた。さらに、ある種の筋ジストロフィーまたは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の疾患モデルマウスにおいても類似の効果を実証したという。
これらの発見を基盤として、研究グループは、DOK7発現ベクターの投与(DOK7遺伝子治療)による「神経筋接合部の形成増強治療」が神経筋接合部の形成不全を伴う多様な神経筋疾患や加齢性の筋力低下に対する治療法となり得ることを提唱していた。
今回、DOK7遺伝子治療の実用化を進めるAmplo Biotechnology社が設立され、この遺伝子治療の社会実装に必要な独占ライセンス契約を東京大学と締結した。これにより今後は、DOK7遺伝子治療による社会貢献の加速が期待される、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東京大学医科学研究所 プレスリリース