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高齢者の「筋の質」、骨格筋量指数・運動機能・日常生活の活動量と強く関係-名大ら

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2019年09月10日 AM11:15

加齢に伴う筋の質の低下、加齢以外の要因を調査

名古屋大学は9月5日、地域在住高齢者における筋の質的指標が全身の筋肉量、運動機能および日常生活の活動量と強く関係することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学総合保健体育科学センターの秋間広教授、医学系研究科の葛谷雅文教授、中京大学の 吉子彰人助教らの研究グループが、名古屋大学未来社会創造機構モビリティ部門人間・加齢特性グループ、星城大学と共同で行ったもの。研究成果は「Ultrasound in Medicine and Biology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

骨格筋の量は加齢に伴い減少し()、骨格筋の内部に脂肪やコラーゲンなどの結合組織が増えると筋の質が低下する。さらに、筋の質の低下は、インスリンの抵抗性を引き起こし2型糖尿病になる可能性を高めること、歩行や日常生活動作を困難にすることが知られている。筋の質は加齢とともに低下することが知られているが、他にどのような要因が関係するかわかっていなかった。そこで、研究グループは、地域在住高齢者を対象に、筋の質の測定とともに身体測定、運動機能の測定、日常での身体活動量の測定を実施し、筋の質の良し悪しに影響する要因の特定を試みた。

質の高い筋肉の維持は、日常生活の自立、糖尿病発症のリスクの軽減に

研究チームは、70~80歳までの地域在住高齢者204人を対象に調査を実施した。はじめに、超音波断層装置を使って撮影された大腿部の前面と外側面の横断画像をコンピューターで画像分析し、筋の質的指標である筋エコー強度を定量化。対象者を筋の質の低い群(=筋内の脂肪や結合組織が多い群)、筋の質が中程度の群、筋の質が高い群(=筋内の脂肪や結合組織が少ない群)の3つの群に分け、握力(筋力の指標)、イス座り立ち(下肢筋力指標)、タイムアップアンドゴー(移動機能)、床立ち上がり(日常生活に関連する機能)、5m通常・最大速度歩行(歩行能力)、6分間歩行距離(持久力測定)の測定を行った。加えて、14日間の身体活動量を3軸の加速度センサーが内蔵された身体活動量計を用いて測定し、1 日あたりの平均の歩数、安静時間、低強度活動時間、中強度活動時間、高強度活動時間、総消費カロリー、活動による消費カロリーを算出した。

その結果、筋の質の低い群は、中程度の群や高い群よりも骨格筋量が少なく、歩行に関する機能も低く、1 日あたりの歩数が少なく、中強度(3.0~6.0 METS 程度の強度)の身体活動量も低いことが明らかとなった。一方で、糖尿病・肥満・サルコペニアの罹患率は、3つの群の間で明らかな差が見られなかった。さらに解析を進め、筋の質の低い群・中程度の群・高い群に判別する要因を調べたところ、(1)全身の骨格筋量指数、(2)6分間の歩行距離、(3)中強度活動時間の3つが該当。すなわち、地域在住の高齢者の場合、加齢以外のいくつかの要因によって筋の質の低下が引き起こされる可能性を示している。

今回の研究結果は、高齢者の骨格筋の質に影響する要因が年齢以外にもあることを明らかにした。今回明示することができた3つの要因を改善することで、質の高い筋を維持することが可能になると考えられる。これは、糖尿病発症のリスクの軽減や日常生活での自立に貢献することで、高齢者の健康の維持・増進に寄与するのではないかと研究グループは述べている。

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