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関節リウマチ患者の大規模調査で、喫煙が自己抗体価に及ぼす影響を明らかに-理研ら

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2019年08月29日 PM12:15

「抗CCP抗体」と「リウマチ因子」に及ぼす影響を解析

理化学研究所は8月27日、)患者における「喫煙歴」がRAの2つの自己抗体価である「抗CCP抗体()」と「リウマチ因子(RF)」に及ぼす影響が、遺伝的背景によって異なることを発見したと発表した。この研究は、理研生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チームの石川優樹客員研究員、寺尾知可史チームリーダーら、、京都大学などの共同研究グループによるもの。研究成果は、英国の科学雑誌「Annals of the Rheumatic Diseases」のオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

RA患者には、自己抗体として主にACPAとRFの2つが臨床現場で日常的に測定されている。これらの自己抗体は、RAの診断のみならず、RAの疾患経過を予測する因子としても重要で、これら自己抗体価の高い患者では、関節破壊が進行しやすいことなどが知られている。また、RA患者では、ACPAとRFはしばしば共存する。

一方、RAのリスクとして「」と「遺伝因子」が知られている。これまでの研究で、遺伝因子の中で最も強いリスクは、シェアドエピトープ(SE)と呼ばれる共通のアミノ酸配列をコードする、HLA-DRB1遺伝子群であることがわかっている。喫煙と自己抗体陽性RA(特にACPA陽性)との関連とそのメカニズムは、これまでの研究でも示唆されていた。しかし、喫煙と自己抗体陽性RAの中での抗体価との関連の詳細はよくわかっていなかった。RAの病態形成において、HLA-DRB1遺伝子などの遺伝的因子に加え、喫煙をはじめとした環境因子が加わることにより、自己抗体の産生やRAの発症に至ると考えられている。そこで研究グループは、RA患者における喫煙が自己抗体価に及ぼす影響を、遺伝的背景との関連を踏まえて解析を行った。

発症時の喫煙が将来のACPA・RF高値と強く関連、SEアレルの有無も影響

研究グループは、RA患者6,239人の直近の受診時における喫煙歴の記録をもとに、非喫煙者と喫煙者に分類。さらに、喫煙者をRA発症時の喫煙状況に基づき、発症時禁煙者・発症時喫煙者・その他(発症後に喫煙開始)に分類した。その後、直近の受診時のACPA・RF値に基づき、ACPA陽性・RF陽性、ACPA高値(ACPA陽性者の上位4分の1)・RF高値(RF陽性者の上位4分の1)の4つに分類した。

発症時の喫煙状況とACPA・RFとの関係を、多重ロジスティック回帰分析で調べた結果、発症時喫煙者は、ACPA・RFの陽性・高値と強い関連を示し、特にRFでこの関連は強く認められた。また、女性よりも男性で強い関連が認められた。

次に、禁煙による影響を検討する目的で、発症時禁煙者をRA発症時までの禁煙期間により3つのカテゴリー(0~10年、10~20年、20年以上)に分類し、ACPA・RF陽性・高値のリスクを非喫煙者と比較。その結果、禁煙期間が長くなるにつれ、徐々にACPA・RF陽性・高値のリスクと患者の割合が低下した。一方、ACPA陽性・高値のリスクは、20年近くの長期にわたり、喫煙の影響が残存する可能性も認められた。これらのことから、発症時喫煙者がACPA・RF高値に強く影響すること(RF>ACPA、男性>女性)、禁煙によってその影響が徐々に低下することが明らかになった。

最後に、RAの発症やACPA陽性・高値と関連することが知られているHLA-DRB1、特にシェアドエピトープ(SE)と呼ばれる共通のアミノ酸配列を持つ特定のHLA-DRB1遺伝子群と喫煙との相互作用が、ACPA・RFに及ぼす影響を調べるために、発症時喫煙者と非喫煙者をそれぞれSEアレルの有無で分類し、SEアレルを持たない非喫煙者を対照とした各群のACPA・RF高値のリスクを算出した。その結果、ACPAにおいては、SEアレルを持つ群で高いリスクが認められ、発症時喫煙者であってもSEアレルを持たない群では、喫煙によるリスクが認められなかった。一方、RFでは、SEアレルの有無に関わらず喫煙によるリスク上昇が認められた。また、複数あるSEのアレルの中で、日本人で一番多いHLA-DRB1*04:05と、それ以外のSEアレルとの違いは認められなかった。しかし、HLA-DRβ1分子内の74番目のアミノ酸の多型が、SEと喫煙の相互作用を説明するものとして確認された。これらの結果から、喫煙の自己抗体価への影響は、ACPAにおいてはSEアレルを持つ場合のみに認められ、RFではSEアレルの有無に関係なく認められるという明確な違いが明らかになった。また、喫煙とHLA-DRB1遺伝子との相互作用によるACPAへの影響がアミノ酸レベルで明らかになった。

今後、欧米人でも同様の解析を行うことで、RA病態のさらなる解明に期待

今回の研究を通して、RA発症時の喫煙歴が将来のACPA・RF高値につながること、SEアレルの有無でACPAとRFで影響が異なること、禁煙によりこれらの影響は徐々に低下することが明らかになった。これらの知見は、いまだ不明点が多いRA病態の解明に向けて有用であり、また将来の自己抗体高値ひいてはRA発症の予測にもつながると期待できる。

研究グループは、「今回の検討は、アジア人での喫煙関連のRA研究としては過去最大規模のものであり、アジア人、特に日本人RA患者において今後の臨床・基礎研究を進めていく上で重要な知見となる。また、今後欧米人においても同様の解析を行うことで、RA病態の解明へのさらなる進歩が期待できる」と、述べている。(QLifePro編集部)

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