ビスフェノールAに類似した三環系ビスフェノール
九州大学は7月29日、内分泌撹乱物質として知られるビスフェノールAに類似した三環系ビスフェノールが、女性ホルモンであるエストロゲンの活性を抑制することを初めて発見したと発表した。この研究は、同大学大学院理学研究院の松島綾美准教授の研究グループによるもの。研究成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。
画像はリリースより
内分泌撹乱物質、いわゆる環境ホルモンは、主にエストロゲンの受容体に結合してホルモンの働きを撹乱すると考えられている。一方で、プラスチック原料であるビスフェノールAも、エストロゲン受容体に弱く結合することが知られている。
三環系ビスフェノール、乳がん治療薬につながる可能性も
研究グループは、ビスフェノールAに類似する化合物の研究において、ベンゼン環を3つ持つ三環系ビスフェノールが、ビスフェノールAよりもずっと強くエストロゲン受容体に結合することを見出した。さらに、三環系ビスフェノールが、エストロゲンによる転写活性を抑制することを発見。これは、環境ホルモン由来の化学構造を持つ三環系ビスフェノールが、乳がんなど女性ホルモン依存性がんの治療薬につながることを示唆する知見だとしている。
さらに、エストロゲン受容体と三環系ビスフェノールが結合した立体構造をコンピュータでシミュレーションし、この構造要因を解明するとともに、核内受容体にビスフェノール類似化合物が結合した状態のab initio計算を行った。また、これまで主に無機化合物などで用いられてきたDV-Xα法を初めてタンパク質に適応して実施した。DV-Xα法は、米国ノースウェスタン大学のD.E.Ellis教授らと京都大学工学部・足立裕彦教授が開発し、改良されてきた計算方法のひとつ。今後、この日本発の手法が、タンパク質の分子軌道計算を発展させることが期待されると研究グループは述べている。
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・九州大学 プレスリリース